F1新車”雑感”解説2024「フェラーリSF-24」95%が新設計? 随所にトレンドを取り入れたように見える1台
フェラーリが2024年シーズン用のF1ニューマシンSF-24を発表した。チーム代表のフレデリック・バスールが「マシンの95%が変更されている」と語る意欲作である。これで、昨年猛威を振るったレッドブルとの差を縮めることを狙う。 【ギャラリー】フェラーリが2024年F1マシン『SF-24』を発表 実際に公開されたSF-24を見ると、確かに多くの変更が加えられているようだ。フロントから見てみよう。 ノーズは、フロントウイングのフラップ3枚が直接接続される形。メインプレーンは1枚目のフラップから、6つのセパレータを介して吊り下げられるような格好になっている。ただ最も車体中心線に近い左右ひとつずつのセパレータは、ノーズの端に対応するような形で配置されている。これにより、ノーズ中心部とその外を通る気流を分け、外側の気流はさらに外に向けて流す……アウトウォッシュの流れを作り出すことを目指しているように見える。一方中央部はメインプレーンだけが下に湾曲するような格好になっている。 ノーズ本体は、昨年のSF-23は先細りするデザインだったが、このSF-24では幅広になっており、印象が大きく変わっている。 フロントサスペンションは、今季ここまでにニューマシンを発表した数チームが取り入れたプルロッドではなく、従来通りプッシュロッドのままだ。アッパーウイッシュボーンの前方アームは、モノコックの高い位置に接続。SF-23と比べると、かなり引き上げられている印象だ。一方で後方のアームは低い位置にあり、前後で高さの差が大きくなっている。これはレッドブルが2022年のRB18で取り入れ、今ではトレンドとなっている手法である。 サイドポンツーンも大きく変わった。インテークは、下端が前方に伸びる受け口のような形状で、これもレッドブルが先陣を切って採用したデザインで、フェラーリもこれに倣った格好。そしてサイドポンツーン下部の抉れ(アンダーカット)部に気流を通し、ディフューザー上へと抜こうとしているようだ。ただ、サイドポンツーン全体を見ると、そのアンダーカットはそれほど過激なモノではない。 サイドポンツーン上面は、後方に向けて急激に落とし込むダウンウォッシュ型を採用。昨年はこのダウンウォッシュの傾向が特に小さかったフェラーリだが、今年は実に過激になった。このダウンウォッシュ部分は、カーボン地のままの不塗装のエリアになっている。 ショルダー部は盛り上がり、サイドポンツーン上面を流れ落ちる気流のフェンスの役割を果たしている。 フェラーリは2022年以来、”バスタブ”と呼ばれるサイドポンツーンの上面に空気を溜めるようなデザインを採用していたが、23年途中にダウンウォッシュ型に一新。これをさらに過激な形で進化させてきたように見える。 ヘイローの付け根の部分には、外側に薄いパーツが取り付けられていて、トンネルを形成。エンジンカウルに存在する段差の外側を流れる気流をコントロールしているのだろう。この段差はカウル後端まで明確に続いており、ここでも空力のコンセプトが変わっていることが伺える。 リヤサスペンションはプルロッドで、これはSF-23と同じだ。ディフューザーのスペースをしっかり確保するためには、プッシュロッドにした方が良いと言われる中、フェラーリはプルロッドを継続してきたわけだ。重心を下げるという効果はあるものの、その狙いは気になるところだ。 リヤウイングについては、昨年終盤まで使ってきた翼端板とフラップが一体になったデザインではなく、これもトレンドになりつつあるフラップが独立して存在するようなデザインにしてきた。 ここまで見ていくと、フェラーリSF-24は独自色を薄くして、随所にトレンドを取り入れたそんなマシンであるようにも見える。 ドライバーのシャルル・ルクレールは、SF-24について「走らせやすいマシンになった」と評価しているというが、その真価はいかに?
田中健一