成井豊、8年越しの思いを実現 舞台『湯を沸かすほどの熱い愛』岡内美喜子&瀧野由美子と“演劇ならではの面白さ”を語る
中野量太の商業映画デビュー作にして、数々の映画賞に輝いたヒット作『湯を沸かすほどの熱い愛』。本作の初の舞台化が決定、成井豊が脚本・演出を手がける。主人公の双葉を演じるのは、演劇集団キャラメルボックスの岡内美喜子。また娘の安澄を、瀧野由美子が演じる。 【全ての写真】瀧野由美子、岡内美喜子、成井豊の撮り下ろしカット
双葉の魅力はスーパーレディでなく弱さも持っている点
――原作は2016年の大ヒット映画ですが、こちらを舞台化しようと思われた経緯は? 成井 公開直後に映画館で観て、大感動して、絶対にこれを舞台化したい!と思ったんです。ただスケジュールの関係でなかなか進まずにいた3年前、中野量太監督が書かれたノベライズ本を偶然発見して。読んだらやっぱり大感動して、すぐにでもやりたいと、許可を取る前に脚本を書いちゃったんです(笑)。だから足かけ8年、やっと舞台化が実現出来て本当に嬉しいです。 ――脚本を執筆する際に意識されたことは? 成井 原作ものをもう40本近くやっていますが、自分の原則は“なるべく変えない”ということ。自分が惚れ込んで舞台化させてもらうわけですからね。なるべくそのままやりたいなと。ただ演劇の場合、どうしても制約があるわけです。簡単にセットチェンジが出来なかったり、着替えの時間が必要だったり。だから映画との大きな違いとして、語り手を登場させています。 ――物語は余命2カ月を宣告された母・双葉が、娘の安澄や夫の一浩らと共に、残された日々をどう生きるかが描かれていきます。演じる双葉と安澄について、どんな人物として捉えていますか? 岡内 双葉って一見、スーパーレディのように捉えられがちだと思うんです。でも実はものすごく葛藤し、苦悩し、弱い部分も持っている。そこが私は魅力的だなと。ただ役のことを考えると、どうしても(映画版で双葉を演じた)宮沢りえさんが浮かんできてしまうことはあって……。とはいえそこはもう開き直るしかないとも思っています。私がどんなに頑張っても、宮沢りえさんになれるわけではないですから(笑)。なにより成井さんの脚本が、映画とノベライズを合体したような作りでとても面白い。そこを信じて頑張りたいと思います。 瀧野 安澄はお母ちゃんが余命宣告をされて、最も影響を受けている人物なのかなと思います。一番近くにいますし、お母ちゃん譲りなところもあって、どんどん強い女性へと成長していく。そんな安澄をうまく表現出来たらなと。その第一歩として、今は繰り返し映画版を見るようにしています。というのも私はほとんど演技経験がなく、確立した自分の演技論、みたいなものが全くないんですよね。もちろんいつかは見ない方がやりやすくなるのかもしれませんし、稽古が始まって自分の考えが変わるかもしれません。でも今やれることとして、映画から習得出来るものがあるんじゃないかと考えているんです。