健康診断「肝臓といえばγ-GTP」「コレステロールに一喜一憂」はもう古い…?内臓のダメージを知るための「本当に正しい結果の読み方」
前編記事【春の健康診断は、血圧より「尿検査」「眼底検査」の結果を見ないと命にかかわる…その意外な理由】では、主に腎機能について解説してきた。続くこの後編記事ではコレステロールなど、肝臓の機能についても引き続き解説していく。 【まとめ】必ず確認したほうがいい…!健康診断の項目はこちら!
肝臓はここだけ見る
健康診断の項目の中で、とりわけさまざまな数値が混在していてわかりづらいのが、肝臓や脂質に関する項目だ。 まず肝臓については、肝臓にたまったダメージの程度を見るγ-GTPやALT・AST、肝細胞のはたらきを見るアルブミンや総ビリルビンなど、難しそうな言葉がずらりと並ぶが、とくに気を配るべき項目はひとつだけだ。日本肝臓学会理事長で、大阪大学医学部教授の竹原徹郎氏が語る。 「昨年6月に肝臓学会が発表した『奈良宣言2023』で、『ALTが30を超えたら受診を』という新指標を定めました。ALTは肝臓の細胞がこわれたり死んだりすると血中に漏れだす物質で、ほぼ肝臓にしか含まれていないため、肝臓の状態を正しく知ることができます」 γ-GTPやASTはほかの臓器や筋肉にも含まれているので、肝臓を見るにはALTが最適というわけだ。「肝機能といえばγ-GTP」は、古い常識なのである。 脂質はどうだろうか。中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールを調べるのが一般的で、「HDLが善玉、LDLが悪玉」と覚えている人も多いはずだ。ところが、長浜バイオ大学教授で『健診結果の読み方』などの著書がある永田宏氏は「基準値から多少ずれていても、気にしすぎる必要はないのではないか」と言う。 「LDLコレステロールは、じつは40代以上のほとんどの人が基準範囲におさまっていません。コレステロール値は食事でかんたんに変動しますから、基準範囲が少し厳しすぎるのではないかと思います。いっぽうで、HDLコレステロールはおよそ9割の人が何もしなくても正常な範囲におさまっています」 むしろ、気にするべきは個々の数値より、その下に書かれていることがあるLH比だ。その名のとおりLDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割ったもので、近年は両者のバランスこそ重要、という考え方が広がりつつある。 「たとえ個々のコレステロール値や総コレステロール値が正常な範囲におさまっていても、LH比が高いと動脈硬化のリスクが上がるといわれています。もし健診結果に入っていなくても、電卓があれば自分で計算できるので、チェックするのを習慣にするといいでしょう」(永田氏) ちなみにLH比は2以下で正常、1.5以下が理想とされている。