栄養士を夢見るマネージャーが“食”でチームを支えた1年間、甲子園3度出場の強豪相手に公立校が大健闘!【24年夏・愛媛大会】
<第106回全国高校野球選手権愛媛大会:松山聖陵4―1伊予農>18日◇1回戦◇坊っちゃんスタジアム 【トーナメント表】愛媛大会 結果一覧 今年、広島東洋カープですでに5勝をマークしているアドゥワ 誠投手などプロアマ問わず好選手を輩出し、過去に春2回、夏1回の甲子園出場も果たしている松山聖陵の愛媛大会初戦が、1回戦最終日に組まれた。 今大会は4年連続のノーシードながら、2020年は独自大会Ⅴ、昨夏も4強進出を果たしている“蒼い脅威”。そんなビッグネーム相手に3回表には二死二・三塁の逆転機を作るなど7回まで1対2と食い下がる健闘を演じたのが、伊予農である。 1年前は、北宇和の左腕・佐々木 了投手(当時2年)に15三振を喫し、初戦敗退に終わっている。この1年で見違える姿を示してくれた。 「中盤までウチのペースで進められた。素晴らしい試合だった」 試合後、悔しさの中に充実感もにじませたのは伊予農・吉田 茂雄監督。そんな指揮官の横でスコアブックに選手たちの奮闘ぶりを記した金子 千絵瑠マネージャー(2年)は、健闘の大きなアシスト役を果たしていた。 中学時代は陸上部ながら、給食の献立について考えるうちに栄養士を志すようになり、伊予農では加工食品の製造なども行う食品化学科に進学した金子さん。そして部活動を「マネージャーをしてみたいと思った中で一番やりがいがあると思った」野球部に定めた彼女にとって、曇り空の下にも関わらず足をつっての交代選手が出るなど、実力を発揮する以前の段階で敗れた最初の夏は悔しさしか残らなかった。 そこで金子マネージャーは栄養について日々学ぶ自分の知識を野球部に還元することを発案。野球部日誌などを使って、朝ごはんに食べたらいいもの、足をつらないために必要な成分などを部員たちに訴求し続けた。 そんな金子マネージャーの気持ちを最も受け止め、実行に移したのが昨夏の北宇和戦では右翼手から一度はリリーフに立つも投球練習中に太ももをつり無念の交代となったエース・キャプテンの山根 陽輝投手(3年)である。 「金子マネージャーに野菜や納豆など朝昼晩に摂るべき食事を教えてもらったおかげで体力も上がったし、実はこの一年間で一度も足をつることがなかったんです」(山根) 松山聖陵打線を8回4失点で抑え込んだ大黒柱の好投は「フィジカルをアップさせてくれた」(吉田監督)、金子マネージャーのアドバイスあってこそだった。 その一方で、天候不順続きから一転、猛暑となった試合当日の厳しさも伊予農を悩ませた。この松山聖陵戦では高校野球の一風景となっている守備終了後のミーティングをベンチ前からベンチ内に移したにもかかわらず終盤には外野手を中心に足をつる選手が複数発生。 「もっと選手たちの頭に残るような行動をして、選手たちの体力を付けてあげたい」試合後、常に微笑をたたえながらも、金子マネージャーはもう次なる課題を見据えていた。 今春には待望の1年生部員11名とマネージャーが3名入部し、心強い後輩たちも加わりさらなる成長が望める。いよいよ最上級生となりそのチームリーダーとしての期待も高まるが、「野球を何も知らなかった私に野球の面白さを教えてくれた」3年生5人への感謝を抱きつつ、栄養士と2019年に唯一マークした夏の大会2勝を超える夢を実現するため、さらなる成長を目指していく。
寺下 友徳