12月「利上げ先送り」観測に勢い。日銀の「変節?」に円売り進む【播摩卓士の経済コラム】
■利上げ先送りで円安進む こうして12月第2週に入ると、逆に、12月利上げ見送り説が市場では優勢になり、追加利上げは1月か3月、といった見方が広がっているのです。植田総裁インタビューを機に市場に広がった利上げ説を、水面下の情報発信で日銀が事実上、大きく引き戻した格好です。 「日銀の変節」にも見える急展開に、為替市場は反応し、11日には1ドル=152円台後半に、13日には153円台まで円安が進みました。利上げをテコに異常な円安を修正することこそ、今の日本のマクロ経済政策に求められる優先課題のはずですが、折角の芽を摘んで、反対に円安を後押しする結果です。一体、何のために市場との対話をしているのかと、言いたくなります。 ■マイナス金利視野のスイスフランにも大幅安 為替市場を見れば、利下げが既定路線のヨーロッパ通貨に対しても円安が進んでいます。1ユーロは再び160円台に逆戻りです。円と同じキャリートレードの対象となるスイスフランに対しても、直近の高値である168円台から173円台へと急落しており、海外勢にとっても、「日銀の変節」観測がサプライズであったことをうかがわせています。 スイスは景気悪化を受けて12日に0.5%の大幅利下げに踏み切りました。政策金利は4回の利下げで0.5%にまで下がっており、スイス中銀のシュレーゲル総裁は「マイナス金利の可能性も排除しない」と危機感を露にしています。そんな金利先安観のあるスイスフランに対してさえ、円安が進行するのですから、円安リスクは深刻だと見た方が良いと思います。 ■1月以降、利上げできる環境か 日銀は、12月に利上げを見送った場合でも、経済データがオントラック(想定通り)であれば、1月か3月には、利上げに踏み切る構えのようです。しかし、私には「12月は時期尚早で、1月か3月なら利上げ可能」という理屈がわかりません。 確かに春闘の行方は時間が経てばそれだけ確かなデータが手に入りますが、大企業の回答は3月半ばまで待たなければなりませんし、すでに労働組合の要求の数字は、徐々に明らかになっていて、12月と1月で大差はありません。
アメリカのトランプ次期政権の経済政策の先行きなど、トランプさんのハラ次第、いつまで待っても不透明なことは、1期目を思えば明らかでしょう。来年1月の決定会合は24日と、トランプ大統領就任式である1月20日の直後です。むしろ不透明さは今より増しているかもしれません。 いつまでも利上げできる環境が続く保証などないように思えます。 播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)
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