NHKの旧ジャニ起用再開に疑問…会長見解「予想とは異なる展開」とSMILE-UP.補償本部長の心ない対応を考えて
性被害者の痛みは風化しない
だが、果たしてそれでいいのか。「タレント個人が旧ジャニーズ事務所の影響の外に移ったら出演依頼する」という考えは、実はとても分かりやすかった。しかし、1年たっても移籍者があまり出なかったので「じゃあ、仕方ない」と根負けして起用を再開するのなら、そこに大義名分はない。 くしくも会見の4日後、NHKスペシャルで旧ジャニーズ問題のドキュメンタリーが放送され、SMILE-UP.社の補償本部長が性被害者の遺族に「誰が何を謝るんだというのが、ちょっと今、分からなくて。本人たちが死んじゃってるんで」などと心ない返答をする様子が流された。これでも旧ジャニーズ問題の被害救済は「着実に進んでいる」と言えるのか。 1年たとうと2年たとうと性被害者の痛みは風化しないのに、「1年たったから、そろそろ」という理由で旧ジャニーズへの出演依頼を再開するのなら、国民から受信料を集める公共放送として説明責任を果しているとは言えない。一歩一歩、丁寧に理由を説明しないければ、この問題は次には進めないのではないだろうか。 □西脇亨輔(にしわき・きょうすけ) 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
西脇亨輔