映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』取材歴20年の脚本家が真実を語る「昔は喋り方もソフトで奥ゆかしかった」
世界中で最もヤバい大統領と呼ばれたドナルド・トランプの若き日を描いた映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が、2025年1月17日(金) より全国公開される。 【全ての画像】『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』場面写真 その発言や行動は規格外で、耳を疑うようなエピソードであふれているドナルド・トランプ。だが、怪物は決して生まれた時から怪物だったわけではなかった。本作は成功を夢見る初々しい20代のトランプが、伝説の弁護士に導かれて驚愕の変身を遂げ、トップへと成り上がるまでの道のりを暴く衝撃の問題作。 監督はこれまで様々な問題作を描き、そのすべてがカンヌ国際映画祭に出品され、本作もカンヌ国際コンペティション部門で高い評価を得たアリ・アッバシ。トランプを演じるのは、『アベンジャーズ』シリーズのセバスチャン・スタン。現在の強気なトランプの姿からは想像もつかない"お坊ちゃん"のトランプ役を演じ、精細な青年から成功者へと成長する過程を圧倒的な演技力で体現しゴールデングローブ賞「主演男優賞(ドラマ部門)」にノミネート。そして、トランプを一流の実業家へと育てた果てに、予想不可能な運命にまきこまれる弁護士ロイ・コーンには、ジェレミー・ストロング。まるでコーン本人にトランスフォームしているかのように演じきりゴールデングローブ賞「助演男優賞」にノミネートされた。 今、敵にまわせば命取りになりかねない、希代のモンスター“ドナルド・トランプの誕生秘話”という危険なテーマに覚悟を決めて向き合った本作。今回は本作の発起人でありトランプ取材歴20年のベテランジャーナリストの顔も持つ脚本家、ガブリエル・シャーマンの告白から本作の魅力を掘り下げる。 政治ジャーナリストとしてキャリアをスタートさせたシャーマンは駆け出し記者の頃から、当時、不動産王として頭角を現していたトランプに何度となくインタビューを行った、言わば最も長い間、至近距離でアメリカンドリームを目撃してきた人物。そんなシャーマンが本作のアイデアを思いついたのは、2016年の大統領選で大方の予想を裏切りトランプが大統領の座に鎮座した時だという。長きにわたる取材の中でトランプの後ろに見え隠れしていたメンター、悪名高き弁護士ロイ・コーンの存在を思い出したのだ。 「メディアを使ってニュースに自分の名前を出し続けろ、それが権力を掌握するひとつの方法だと、トランプはロイから教わっていた」選挙期間中も大統領就任後も、トランプがコーンから学び取った戦略を遂行していることを知ったシャーマンは「師匠ロイ・コーンがこの若い弟子に、話し方や、権力を握るための老獪なやり方を伝授したことは映画になる」と初の脚本執筆に取りかかった。 「既視感のあるありきたりのものとか、偏った政治コメディになることだけは、まっぴらごめんだった。複雑で欠点もあり、不満も抱えてもいれば意外性もある、トランプをリアルな3次元の人間として描きたかった」と語るシャーマン。その言葉の通り本作では、不屈の怪物であると同時に欠点もあり、富と権力を追い求めると同時に懐の深さや愛情も持ち合わせた誰も知らないトランプの姿が描かれる。 しかし、案の定、本作の存在がトランプ本人の耳に届き、今年5月にカンヌ映画祭で絶賛され8分間のスタンディングオベーションを受けた直後、トランプ陣営より「この映画の制作を続けるなら、訴訟を起こす」と停止命令の手紙を受け取った上に、SNSには「このゴミの山を書いたゲイブ・シャーマンは、下劣で才能のない下手くそだ」と、トランプ本人が激怒の投稿。それほど本作ではトランプの暴かれたくなかった過去が明かされることが伺える。 それを受けてシャーマンは「トランプを激昂しやすく、人を不快にして対立させる男を演じる役者のように感じるだろうが、そんな役どころを長いこと演じているうちに、とうとうそれが彼のアイデンティティになってしまったんだ。駆け出しの20代の頃にはそんなアイデンティティはまだなかった。前のめりの野心家には違いないが、昔は喋り方もソフトで奥ゆかしささえあった。それも彼の魅力のひとつ。どことなく自信のない感じで、僕らの知る今のトランプとは正反対だ。誰も知らないトランプの側面を描くことも、この作品を作るうえでエキサイティングなことのひとつだった」と、さらにトランプの過去を暴露する余裕のコメントしている。 <作品情報> 『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』 2025年1月17日(金) 公開