〈初週82万本売上〉リメイク版『ドラクエ3』は空前の大ヒットを記録! …それでも否定的なファンが後を絶たない“納得の理由”とは
リメイク版への不満はなぜ生まれたのか
RPGというジャンルも変化している。「ドラクエ」シリーズのような日本で発達した作品はJRPG(日本のRPG)と捉えられており、レトロで懐かしい存在といえる。一方で、いまや当たり前になっているのはオープンワールドRPG。「ドラクエ」シリーズと同じく古典的なRPGといえる「ポケモン」シリーズですらオープンワールドRPGへと変化を遂げた。 あくまで筆者の私見だが、スマートフォンで大きく普及したいわゆるソーシャルゲームもRPGの一種だと捉えることもできる。たいていのソーシャルゲームにはRPG要素(育成と収集)が欠かせず、現在その遊びを担っている一大ジャンルといえるのではないか。 いずれにせよ、「ドラクエ」シリーズが置かれている状況は今と昔では異なる。かつてはゲームの王様だったし、世相的にもRPGというジャンル自体が大人気だった。1988年に発売されたゲームをリメイクするとなると、その時代の違いを考慮して変更を加えなければならない。 昔を懐かしむ人に楽しんでもらうのはもちろん、海外進出をするための変更を加える必要がある。かつ、ナンバリングの「ドラクエ」シリーズは発売期間が空いているため、若年層向けにもアピールする必要がある。 スクウェア・エニックスは世界的企業なのでこれは当然なのだが、これは「1988年当時の国内向けRPG」にメスを入れることでもあり、それが一部ユーザーの不満に繋がっていく。
海外展開を意識した“ジェンダー配慮”に生みの親が苦言
海外展開をするうえで、HD-2D版『ドラクエ3』はジェンダーに対する配慮を行っている。 本作では最初に勇者の設定を行うのだが、性別を決めるのではなく、「ルックスA」、「ルックスB」と見た目を決めるような文言に変更された。そして、これに対して一部のユーザーから反発が起こっている。 性別ではなく見た目を選ぶというのは、昨今のゲーム業界ではスタンダードなものである。これによって男女に限らない性別の人も違和感なく選べるようになるのだが、古いゲームゆえにその姿勢を受け入れない人もいたわけだ。 また、性的な表現の変更もあった。本作ではルックスB(過去作では女性)の戦士がビキニアーマーを装着しているのだが、HD-2D版になるにあたりインナーが追加されており露出が控えめになっている。これは単純にビジュアルの調整がいまいちで、配慮のための強引な修正に見えてしまったのもよくなかった。 いずれにせよ、リメイクにおいて「原作と違う」ことはそれだけで反発を呼びうるのである。日本にRPGを広めた「ドラクエ」シリーズは保守的なJRPGになっており、なおさらセンシティブな問題になっていく。 何より、「日本の国民的RPG」が「世界向けのRPG」に修正されるとなると、ゲームのアイデンティティすら揺らぐと不安に感じる人もいるだろう。あくまで国内の絶対的な存在でいてほしい、という気持ちも理解できなくもない。それだけならまだしも、「ドラクエ」の熱狂的ファンであれば自身のアイデンティティにも繋がりうる。 しかし、前述のようにいまやゲームは世界に売るべき状況になっているわけだ。スクウェア・エニックスとしては変更を通さざるを得ないだろう。 一方、「ドラクエ」シリーズ生みの親である堀井雄二氏は、ジェンダー配慮に対して苦言を呈している。 〈「男女にしていったい誰が文句を言うんだろう。分からない」 産経新聞 ドラクエ3リメーク版の「性別撤廃」に"生みの親"井雄二氏が苦言「誰か文句言う?」 より〉 世界向けのJRPGになりたいのかどうか、うまく足踏みが揃っていないような状況といえる。