残暑の蚊、とっさに〝シュッ〟も…殺虫剤、子どもや妊婦への影響は? 実は国の「エコチル調査」でテーマに
殺虫剤の影響はわずか
結論から言うと、妊婦の殺虫剤・防虫剤の使用と子どもの体格の発育の各指標(出生時体重・身長、生後1カ月までの体重増加量・身長増加量)との関連について、特定の殺虫剤・防虫剤の使用は出生時体重や身長増加量の減少と関連していましたが、個人レベルで見るとそれらの影響は大きくはありませんでした。 どのくらいの程度かというと、「妊婦が燻煙式殺虫剤を使用した場合、使用しなかった場合に比べて、子どもの出生体重の推定平均値が約12g減少する」「妊婦が蚊取り線香/電気式蚊取り器を毎日使用した場合は一度も使用しなかった場合に比べ、子どもの身長の推定平均値が0.11cm小さくなる」というものでした。 ここで、燻煙式殺虫剤とは、ゴキブリなどの駆除を目的に、もくもくと部屋中に白煙が広がるような商品ですから、蚊の駆除を目的にプッシュするだけの商品とは、成分量なども異なるでしょう。 もちろん、研究には限界もあり、チームは「殺虫剤・防虫剤をそれぞれどの程度使用したかについての妊婦の自己記入式質問票の回答に基づくため、実際の化学物質のばく露量はわからなかった」「殺虫剤・防虫剤に含まれる成分のうちどれが子どもの体格の発育と関わるかについての検討は困難」とコメント。 さらに、「これらの影響が子どものその後の体格の発育を含む様々な発達とどのように関わっていくのかについてはまだ十分に解明されていません」とし、今後のさらなる検討の必要性を強調しています。 また、エコチル調査は「因果関係を推論するための一つのエビデンス(科学的根拠)であり、因果関係を明らかにするためには、エビデンスを重ねていく必要がある」とされます。 こうしたことを踏まえても、虫を駆除する成分を使う以上、リスクがあるのは仕方のないことです。そもそも、殺虫剤のパッケージに使用上の注意があるように、リスクを把握し、それを上回るベネフィット(恩恵)があると判断して使用するのは、こうした殺虫剤であれ、例えばワクチンのような医薬品であれ、重要なことでしょう。 同時に、前提として、使用上の注意のような情報にアクセスしやすいことも大事なことだと感じました。 毎年発表されるエコチル調査を解析した研究のテーマには、他にも「妊娠中の自宅内装工事(増改築を含む)や職業上の有機溶剤の使用と、先天性形態異常の発生」といった気になるものもあり、子育ての当事者として、あらためて注目したいと思います。