【カレーライス】堀切菖蒲園の名酒場で出会った「幸福の黄色いカレーライス」:パリッコ『今週のハマりメシ』第122回
さっそく届いたガツねぎの頼もしい量と美味しさに、もう確信した。この店、超名店。きんぴらもおしんこも、まったく値段と釣り合っていないおつまみ力の高さだ。 名物だという「やまさん焼き」(300円)は、キムチとチーズ入りのお好み焼き風でこれまたいい。「キクラゲ玉子炒め」(300円)は、中華料理では木須肉(ムースーロー)の名前で定番だけど、ここのは和風だしが効いたオリジナルテイスト。食べた瞬間、こんどオリジナルレシピを紹介している連載で絶対にパクってやろうと心に決めた。 なにを頼んでもあまりにも美味しく、ボールをがんがんにおかわりしつつ、さらにつまみをどんどん頼む。揚げものゾーンから、「しいたけとれんこんの肉詰めフライ」(350円)に、「ねぎみそトンカツ」(350円)。 どちらも店では最高級の350円メニューながら、その味は感動的。というか、すでに感覚が麻痺してしまっているけれど、揚げたてのとんかつが1皿350円って、どう考えても設定がバグってる! そしてこの店でもうひとつ外せないメニューが、その名も「幸福の黄色いカレーライス」。いわゆる昔ながらの、カレー粉と小麦粉を使った黄色いカレーで、専門のムック本「幸福の黄色いカレーを食べられるお店」にも取り上げられたことがあるらしい。 ここは飲み屋であるから、当然このカレーだけを頼んで帰るというのはNGらしいけれども、なんと1皿300円! どうしても気になって注文し、目の前に届いたそれを見てまず驚いたのが、事前に想像していたおつまみカレーなんてレベルではない、本気のボリュームのカレーだということ。 たっぷりの豚肉が見るからに嬉しく、柔らかいけれどもしゃきしゃき感も絶妙に残る玉ねぎが存在感あり。カレー自体は、スパイス感がしっかりと効きつつも優しく癒される味わいであり、本気で毎日でも食べられそう。あらためて、このカレーが300円? むしろ、絶対に通いすぎてしまうだろうから、近所になくて良かった店とすら言えるかもしれない。「幸福の黄色い」という枕詞は、当然、高倉健さん主演の名画「幸福の黄色いハンカチ」からとられているのであろう。そこに、さっき頼んでまだ皿に残っていたとんかつを、何気なくのせてみる。 するとカレーは、もはやカレーの域を超え、「幸福そのもの」とも言える存在に進化してしまうのだった。 うまくて安い料理。親父ギャク連発のご主人に、明るい女将さん。そして、全員がまるで旧知の友達であるように盛り上がる、店のお客さんたち。すべてが完璧で、まるで理想郷のような酒場だったな、やまさん。近所になくて良かったと言いつつ、わざわざ堀切菖蒲園まで通ってしまいそうなのがおそろしい。 取材・文・撮影/パリッコ
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