「幻滅期」・・・被災者の心の不調なぜ?罪悪感も 能登半島地震 #みんなのギモン
■「助けを求めることに罪悪感」
福島さんとともに輪島市で活動する国境なき医師団のプロジェクト・コーディネーター川邊洋三さんは、被災者の心のケアを難しくしている要因に「能登の土地柄」があると感じています。忍耐強い土地柄、自己主張を控え、悩みを積極的には他人に相談しない人が多い土地柄です。 「ご自身はいかがですかと聞くとほぼ全員が、私は大丈夫ですと言うのです。本当は話したいことはあり、話し始めると一気に出てくるのですが」 「私の家だけ残ってしまって申し訳ない、私だけ畳の上で寝られて申し訳ないといった罪悪感を抱く人もいます。周囲の誰もが似たような思いを抱えきつい生活を送っている中、つらいと口にすることは弱さだと思い、カウンセリングを受けるのは特殊なことだと考える人が多いと思います。だからカウンセリングをやりますと呼びかけても人はすぐには集まりません」
■市役所の職員も
こうした中、心の傷に蓋をしながら24時間態勢で働き続けているのが市役所の職員です。国境なき医師団の心理社会的サポート責任者・笹川真紀子さんは、輪島市役所を訪れて職員らとの面談を重ねています。 ある職員は身近な親族を亡くしました。別の職員は介護の必要な高齢の親を他県へ避難させ、自分は残って窓口で罹災証明発行などの仕事を続けています。余震が来たら自宅が倒壊する恐れがあると言われたものの部屋の整理をする余裕もないまま、次々と降ってくる仕事に追われる職員もいます。 「市役所の中は、今休むわけにはいかない空気感です。オンとオフがないんです。休んではいかがですかと聞くと、いやいやそれは無理、自分だけ休むわけにはいかないと皆さんおっしゃいます」 でも体は正直です。気は張った状態でも、頭痛や腰痛の症状が出たり、血圧が高くなったり、ヘルペスを発症したりする人が現れ始めているといいます。 「市役所の職員は市民からの不満をぶつけられやすく、窓口で職員がこらえている姿を目にすることもありますが、職員にとってはとても心の負担になります。しっかりとした心のケアが必要です」