『虎に翼』が言及した関東大震災での朝鮮人虐殺 変わらぬ差別と人種問題を考えるために
航一(岡田将生)「全ての事件に公平でいるなんて無理」
そして次の公判では前回の裁判で無実を訴えていた弟・広洙の姿もあった。検察側が時限装置を使えば放火は可能であると述べるが、広洙は「そんなに俺たちを悪者にしたいのか?」と反論する。当然、まだ2人が犯人とは決まったわけではない。しかし、入倉は「あの弟が怪しいんじゃないですか。あんな騒ぐってことは何かあるとしか」と憶測だけで犯人だと仕立て上げようとする。 それを聞いていた航一は、関東大震災で「暴動を起こした」という流言が飛び交い、多くの罪のない朝鮮人が殺されたことを引き合いに出し、入倉の憶測をやんわりと否定する。火のないところに煙は立たずで終わらせるのか、その煙を上げたのが誰かを見極めるのか。私たちは航一が話すように憶測ではなく、物事をきちんと判断していかなければいけない。 いつものようにライトハウスを訪れた寅子と航一。しかし、そこで寅子は店がたびたび嫌がらせに遭っていたことを知る。新潟に来てすぐにこの店に関係する多くの人との話し合いを重ねた涼子だが、それを知らない人が贔屓されていると勘違いして起こしていたようだ。日本国憲法が公布されてもなお、なくならない差別や偏見。寅子はそんな現実に無力さを感じていた。差別される人とする人を公平に扱うなんてことはできるのか。「私、ご一緒している裁判にふさわしくないかもしれません」と話す寅子に、「全ての事件に公平でいるなんて無理ですよ」と寄り添う航一の姿が印象的だった。
川崎龍也