「恨み」が健康に与える影響とそれを手放す4つの方法
「怒りっぽい人」という印象を持たれたい人はいない。でも、私たちの中で、鬱積した怒りや恨みという感情が蠢いているのは事実。自分だけ仕事に復帰して育児から解放されたパートナーを恨めしいと思っていたり、自分が昇進・昇給したからといってバンバン注文したあげく堂々と「割り勘しようね」と言ってきた友人に内心ムカついている人は絶対いるはず。 【写真】心が疲れていない?ストレスを感じている「10のサイン」 もしかしたら不安定な政治情勢で私たち1人ひとりがピリピりしているからかもしれないけれど、最近は人と人、あるいは人となにかの間に不協和音が生じ、シャワーヘッドに溜まる石灰と同じくらい頑固な恨みつらみに発展することが多い。 小さくて陰湿な恨みという感情は、どこからでもサッと忍び寄ってきて私たちの中に蓄積していく。そして、この現代社会は人々の恨みつらみで飽和状態。その影響は非常に大きい。専門家いわく恨みは、慢性的なストレスや不安と同じくらい、私たちの免疫力と心に大きなダメージを与えるという。
恨みの根本的な原因
ダメ出しばかりされて育った私たちの親とは違い、20世紀後半生まれの子どもたちは前向きな言葉をかけられて成長してきた。そして「なりたいものには何でもなれる」と信じ込まされ、「大事なのは努力すること」と教え込まれたものだから、大人になると現実の人生に失望する。 「子どもたちに世の中は公平であると教えても、あとで失望することになるだけです」と語るのは、英シェフィールド・ハラム大学で教鞭をとる心理学者のアン・マカスキル教授。そして、見事に打ち砕かれてしまった期待をさらに木っ端みじんにするのがSNSだ。 SNSは情報の宝庫なので、昨今は何でもかんでもSNSのせいにしてしまいがち。確かにSNSには恨みを誘発するような罠が仕掛けられている。「SNSを使っていると、つい自分を人と比べてしまいます」と話すのは、英マンチェスター大学心理学部のケーリー・クーパー教授。「それが自己肯定感の低下を招き、恨みの根本的な原因を作ります」 自分に自信がないときは傷つきやすいし、本来の自分らしくいられない。その昔、SNSがなかった頃は別れた人(パートナー、友達、同僚)と二度と会う必要がなかった。 でも、SNSがあるいまは完全に縁を切ることが難しいため、恨みという火が大きくなる一方で、それを消す私たちの能力は低下していく。「オンラインストーキングはとくに恨みを増幅させます。もうすでに恨んでいる人がいるのなら、その人に対する恨みを自分でどんどん大きくすることになります」 テクノロジーの進歩は心の知能指数(EQ)にも負の影響を与えている。「最近は対面でコミュニケーションを取る機会が減ってきました」とクーパー教授。「非対面形式のコミュニケーションでは、社会的手がかり(相手の立場を理解するために必要な情報)を見つけたり、相手の意図を読み取ったりすることができないため、早とちりする可能性が高くなります」 対面では単なる皮肉と思ってもらえるような冗談も、メールでは受動攻撃と思われる。友達にメッセージでドタキャンされると、声になら表れるストレスや誠意が感じられない。にもかかわらず、私たちは直接会って話すこともせめて電話することもなく、心の中で激しく怒り、恨みという名の無言の壁を作っていく。