<世界選手権>羽生結弦のミスを生んだメダリスト包囲網
■羽生結弦 まさかの3位スタート フィギュアスケートの世界選手権が26日に開幕し、男子シングルSPが行われた。ソチ五輪金メダリストの羽生結弦は、五輪で史上初の100点超えをマークしたときと同じプログラムを演じたものの、冒頭の4回転トゥループで転倒し、91.24点で3位と出遅れた。 98.21点で首位に立った町田樹、96.42点で2位となったハビエル・フェルナンデス(スペイン)の後塵を拝するというまさかの演技になってしまったのはなぜか。 「(4回転)トゥループの失敗に関しては悔しさがある。練習でもショートのトゥループはミスなく来れていたので、ちょっとした過信や気の緩みなんかがあったのかなと思う」 ■メンタルの部分における緩み 羽生はミスの原因を「過信」と「気の緩み」であると捉えていた。つまり、メンタルの部分に問題が生じていたのだと分析していた。 自身の内側に原因があると思ったことで、羽生は自分を責めているようだった。努めて冷静を装いながらも、表情にときおり険が浮かんだのはそれが理由だろう。SPの1位から3位までが出席した会見の席では、町田とフェルナンデスの横で「今ここ(3位)にいる自分が許せない」とまで言った。 しかし、客観的に考えれば単にメンタルの部分だけで結論づけてしまうことはできない。他のライバル勢が“打倒・羽生”を目指して難度の高いプログラムで勝負を挑んできたからこその状況であるからだ。 ■重圧となっている「4回転戦国時代」 2010年バンクーバー五輪で銀メダルのエフゲニー・プルシェンコが打ち出した「4回転論争」から4年。4回転を組み込む選手は年々増え、今季は単独の4回転ジャンプではなく、コンビネーションで4回転を使う選手が激増した。今回の世界選手権SPでは、6人の選手がコンビネーションジャンプで4回転―3回転を跳んでおり、3人しかいなかった昨年の世界選手権と比べて倍増という数字だ。 フリーでは羽生も2種類の4回転を組み込んでおり、来季は19歳という若き金メダリストを追い越すために、より多くの選手が4回転の使い方に工夫をこらしてくるだろう。 「いまのところは気持ちの緩みくらいしか、ミスの原因は分かっていません」と羽生は言うが、自身が拍車を掛けた「4回転戦国時代」だからこそ、プレッシャーがきつくなったと言える。