清水草一が乗るちょっと古いクルマ、フェラーリ328 GTS(1989年型) もう速さには意味はない? おれのロマンはここにある!
これが死と隣り合わせの快楽だ(笑)by 清水草一!
なぜいま、ちょっと古いクルマがこれほどまでに盛り上がっているのか。それを探るべく、5人のモータージャーナリストと、5台の彼らのちょっと古い愛車に、集まって語ってもらうことにした。一回めの今回は、清水草一さんが所有する1989年型フェラーリ328GTSを取り上げる。 【写真8枚】清水草一さんが一生添い遂げたいというフェラーリ328GTS(1989年型)の詳細画像を見る ◆こういうのがオレの原点 私は50代半ばになるまで、古いクルマ趣味はほぼ皆無でした。特に信奉するフェラーリに関しては、できるだけ新しいモデルに乗ることによって、ともに人生を歩みたい、すがりついて行きたい!(演歌調)と願っていました。 それがある日突然、ちょっと古いモデルに戻りたくなったのです。なぜなら、V8ミドシップ・フェラーリがターボ化し、もう自然吸気には戻らないことが明確になったからです。 ターボ化したV8フェラーリは、甲高いフェラーリ・サウンドを失っていましたし、あまりにも速すぎて、私の手には負えませんでした。そもそも、当時乗っていた458イタリアでも速すぎて大変だったのですが、それがさらに速くなっちゃって、この先に何かステキな未来はあるんだろうか? という疑問がもたげました。 (あ、もう速さには意味がないのか!) 速さに意味がないとしたら、何に意味があるんだろう。自分のロマンはどこに残ってるんだろう。 3秒ほど考えて答えが出ました。それはフェラーリ328だったんです! 思えば、自分が最初に憧れ、心から欲しいと願ったフェラーリは328でした。結局最初に買ったのは348になりましたが、初恋の相手は328。その後328に乗った時期もありましたが、それはあくまでフェラーリ信奉者として過去のモデルも知っておきたいという聖地巡礼的な購入で、本命はできるだけ新しいモデルのほうでした。 でも今回は、中高年の本命として328に戻ったんです。これが自分にとっての悟りの地だ、極楽浄土だという思いで。 久しぶりに乗った328は、すさまじい刺激に満ちていました。新しいフェラーリに比べるとメチャクチャ完成度が低く、高速道路で普通に走っているだけでバラバラになるんじゃないかという感じでした。走っているだけで奇跡だなこれはというくらいスタビリティが低く、首都高で軽自動車の後ろについて走るだけでレーサー気分! それでいてヨーロッパ仕様のエンジンは、昔のレーシングカーみたいに激しく獰猛に吼え立てるのです。 (これだ! これが死と隣り合わせの快楽だ!) イベントでは、自分の328でR32GT-Rと加速対決を行いました。負けは覚悟のロマンとして。ところが勝ってしまいました。何度やっても勝っちゃうんです。シャシー性能は猛烈に低いけど、加速だけは意外といいんです。機関絶好調の270馬力なので! (これだ! これがオレにとっての永遠のロマンだ!) そう言えば、最初に買った初期型348も真っすぐ走らない臨死体験マシンで、乗るたびに死と隣り合わせの快楽を味わっていたっけ。こういうのがオレの原点なんだ。328は回春剤だ! ちょっと古いフェラーリ最高! フィオラバンティのデザインも最高! 今度こそ一生添い遂げます! ウットリ。 文=清水草一 写真=神村聖 ■フェラーリ328 GTS(1989年型) フェラーリ328は308の発展形として1985年に登場、1989年までクーペのGTBとタルガトップのGTSが生産された。これは1989年型の最終型GTS。エンジンは3.2リッター V8DOHCで最高出力270ps、最大トルク31.0kgmを発揮する。2019年に総額1180万円で購入し、走行距離は約4年間で4000kmほど。328とともに出かけるシチュエーションの多くは、自宅からの首都高1周50kmコースで、これを年に何回かこなす。運転席のピローと助手席後ろの消火器、LEDライトはノン・オリジナル。本当はライトは暗い方が好き。いまのところトラブルは燃料ホースの経年劣化くらい。乗るたびにますます絶好調である。(清水草一) (ENGINE2024年5月号)
ENGINE編集部
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