『スラムダンク』で一番の不遇キャラ?山王工業「松本稔」は本当に“戦犯”だったのか
井上雄彦さんによる漫画『SLAM DUNK』には、超人気キャラクターが多数登場する。そんななか、“山王敗北の戦犯”と不名誉な言葉で長年評され続けてきた男がいる。それが、山王工業高校3年・松本稔だ。 ■【画像】「映画予告でも不遇だった?」三井に打たれる松本稔の切ない姿■ はたして彼は本当に“戦犯”なのか? いったいどんな選手だったのか? 今回は、この松本稔という男をもう一度見直してみたい。
■「沢北がいなけりゃどこでもエース張れる男」
湘北戦で松本が初めてコートに投入されたのは、前半、エース・沢北栄治をいったんベンチに下げたときだ。 その際はたいした活躍を見せなかった松本だが、後半に入ってからはオフェンス面で頭角を現し、観戦中だった海南大附属高校のメンバーからも「あの6番 後半になって えらく目立つな」と注目された。ちなみに、このとき海南3年・武藤正が口にした「沢北がいなけりゃ どこでもエース張れる男さ」という松本情報は、武藤本人の認知度以上に有名なセリフとなっている。 実際、松本からマークされていた三井寿も「こいつうめえ…‼」と認めていたし、疲れていたとはいえ一歩も動けずに抜かれる始末。さらにその直後、松本はヘルプに入った赤木にファウルを受けながらもきっちりゴール下でシュートを決め、その後、フリースローもきっちり沈め得点を重ねている。 そもそも、松本は日本一の強豪校でスタメンを張る男なのだ。湘北戦では序盤三井を警戒してディフェンス要員の一之倉聡にスタメン変更となったものの、それでも相当な実力を有していることは疑いようがない事実だろう。
■どうして“戦犯”と呼ばれるに至ったのか
では、このように確かな実力を持つ松本が、いかにして“戦犯”と呼ばれるのに至ったのか。一番の理由は、後半立っているのもやっとの状態だった三井に連続3Pを決められ、湘北に追い上げを許す要因を作ったことにあるだろう。 まず、後半残り10分で山王20点リード、このまま一気に突き放したい場面だ。ここで松本は、朦朧状態で「オレの名前を言ってみろ…‼」「オレは誰なんだよ」などとブツブツ言ってくる三井の不気味さに翻弄されながら、3本の3Pを許す。 その後、残り3分半の場面でもう1本入れられて10点差まで詰め寄られ、さらにラスト1分を切り、わずか5点差の場面でもう3点、同時に三井のフェイクに引っかかった際、ファウルを取られてワンスロー。これにより点差はわずか1点となり、最終的に山王は逆転負けを喫した。 ここで描かれているだけでも、わずか10分間で16得点。しかも終盤では三井を完全にフリーにしてしまっている。“松本が三井を放置しなければ、山王が負けることはなかった”と思われるのも仕方のないことかもしれない。