老いも不調も、言葉と視点を変えればすべてポジティブに 91歳の“伝説の国語教師”が教えるノーストレスな生き方の極意
患者さんの中でも、目立つ存在だったことでしょう。 佐藤「あるとき、ご飯にちょっぴりおこげが入ってきたの。患者にはそういう焦げたのなんか入れないようにしてるのではないかしらね。そうしたら、ちょっぴり入ってきたそれがおいしかったのよ。いつもは家の電気釜だから焦げはできないじゃない。 きつね色のおこげがちょぴっと入ってたのがうれしくて、それをそのときメニューに書いて戻したら、ちゃんと読んでくれてるんでしょうね。それから私に時々おいしいおこげを入れてくれた」 入院食のメニュー表に書いたコメントは褒め言葉が多かったそうで、ここからまた話題は教育へと移りました。 佐藤「私は褒めるのがうまいのよ。中学では高校入試のための書類を書くでしょう。あれに数字では表せないような部分を言葉で書く欄があるんです。これがまた面白い。そこにたくさん褒め言葉を書くわけです。 ただ、どの生徒にも同じ褒め言葉だとよくないでしょう。特に私の教えていた中学校は、同じ進学校を大勢受験するんだから、同じこと書けないじゃないですか(笑)。そういうので鍛えられましたね。 生徒の作文を読むにしても、正直、200人分も読むのは大変ですよ。そんなときは読んだふりをするわけ(笑)。さっと読んで、褒めることを見つけたら、あとは読まずにそこで褒めて終わる。『私の褒め言葉100選』という本を残しておきたかったものですね」
ストレスを感じないライフスタイル
取材中、きむさんは幾度も「楽しい」「面白い」「恵まれている」というポジティブな言葉を自然に使っていました。ストレスを感じないそのライフスタイルはどのような考え方から生まれているのでしょう。 佐藤「今の時代の若い人たちは何かと悲観するけど、私は戦争を知ってるから、『戦争さえなければあとは十分楽しい』と思ってるんです。 私は自覚的に知的好奇心を持つほどの真面目さは持っていないし、面白いことを求めているわけでもない。楽しかったらいいな、という程度です。 これはやっぱり、長年学校に勤めていたおかげです。教え子たちの良いところをまず見つけなければ、先に進まないでしょう。物事の良い面を見る力が自然と身に付いたんじゃないでしょうか」