小規模蒸留所が急増!海外からも熱視線、日本のウイスキー蒸留所の実力【WBSクロス】
日本のウイスキーは年々、世界的に評価が高まり「原酒不足」が続く状態になっていますが、一方で、新たにウイスキーの生産に乗り出す小規模の蒸留所が急増していて、海外企業が出資するほどになっています。現場を取材しました。 東京・上野にあるバー「The Auditorium」。棚には国産ウイスキーがズラリ。大手メーカーから小規模な蒸留所のものまで、常時300種類以上提供しています。 ただ4月、サントリーの山崎や響、ニッカウヰスキーの竹鶴や余市といった主要ブランドが、大幅に値上げされました。
その影響はこちらのバーにも及んでいます。宮城峡や山崎12年などの価格を1.5倍程度に引き上げました。それでも円安を背景に、外国人観光客の人気を集めているといいます。 「海外では日本の価格の3倍ぐらい。外国人は為替の影響もあって安いと喜んで飲んでいく」(「The Auditorium」の川﨑堅城オーナー) 大手メーカーが値上げに踏み切った理由の一つが、設備投資のための原資の確保です。背景にあるのはハイボールブームや海外での日本のウイスキー人気による原酒不足。その解消のため、生産体制の強化を進めているのです。 ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所では、敷地の西側を中心に貯蔵庫が10棟以上連なっていますが、3年前北側に新たな貯蔵庫を建設しました。およそ5万個の樽を貯蔵することができるといいます。 「2019年と比べ約6割ほど収納力が増えている。やはりウイスキーは熟成されるには、何年もの時間がかかる」(ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所の小島伸一さん) 原酒の生産能力もグループ全体で2割増強しました。またサントリーも同様に、生産設備の強化に努めるとしています。
ウイスキーに参入続々
その一方で、今増えているのが小規模事業者の参入です。2010年に全国で8カ所だった蒸留所の数は、現在は99カ所に急増しています。17日、都内でウイスキーの新ブランドを発表した小正嘉之助蒸溜所もその一つです。 「自分たちにしかできない、自分たちだからこそできるジャパニーズウイスキーを作ろう」(小正嘉之助蒸溜所の小正芳嗣社長) 鹿児島にある焼酎の蔵元「小正醸造」は2017年からウイスキーの生産を開始。3つ目のブランドとなる「嘉之助ダブルディスティラリー」の値段は1万4300円です。 「日本を代表する蒸留酒である焼酎。この技術を生かし、次世代に向けた新しいウイスキー造りを鹿児島の地で行っていく」(小正社長) 焼酎の技術を生かしたウイスキー造り。その現場を訪ねてみると、東シナ海を臨む、さながら観光スポットのような場所でした。嘉之助蒸溜所には毎月、国内外から数百人規模の見学客が訪れます。ウイスキーの本場スコットランドの蒸留所をモデルにして、およそ11億円かけて建設しました。 生産現場を案内してもらうと、大麦麦芽のみを使い、ウイスキーの原酒を生産していました。中でも、風味や香りを左右する「蒸留」の工程にはこだわりがあります。 「小さい蒸留所だが多彩な原酒を作れるのが嘉之助の魅力になっていると思う」(小正嘉之助蒸溜所の中村俊一所長)