「いきなり桃の収穫に(笑)」サッカーの強化から農業部まで還暦を過ぎた“セキさん”こと関塚隆のJ3福島での新たな挑戦【インタビュー1】
農業部の活動も
そんな縁のある福島での仕事は、地域ならではの形でスタートした。 「来ていきなり桃の収穫に一緒に行ったんですよ。それで農家の方に『できるだけ高いところから取って!』と教えてもらい、60過ぎの僕が木の一番高いところに登って収穫するという(笑)。でもそれで皮をむいて食べてみたら、これがめちゃくちゃ美味しい! その時は樋口寛規(FW)らと一緒に行って、色々教えてもらいましたね」 福島では、地域貢献のために選手が地元の農家に出向いて農作業を手伝う「農業部」という取り組みを行なっており、りんご、桃、ぶどう、米などを育てて収穫。その農作物はクラブが買い取り、試合会場やオンラインショップで販売し、農家をサポートするとともに、クラブ経営にも活かしているという。 練習後の農作業は選手たちにとっては負担になる場面もあるかもしれず、もしかしたら「そんなことをやっているから勝てないのではないか」と揶揄する声も聞こえてくるのかもしれないが、これこそ、福島が貫く地域密着と言えるだろう。 自分たちが福島を元気に、活気づけないでどうするんだ。そんな決意が聞こえてきそうな活動を、関塚氏もポジティブに捉える。 「年間で全国の皆さんに提供できるような形になっているし、この活動こそクラブのひとつの良さ、形ですよね。 活動は改めて全員でやってほしいですし、今シーズンも鈴木社長に農業部の大切さを話してもらいました。だからみんな積極的にやってくれていますよ。そういう面も含めてチームの雰囲気が良いですよね。そこは本当に嬉しい。 当然、プロですから結果が求められますよ。でも今の時代、関わる人、みんなに楽しんでもらうと言いますか、話題にしてもらえるようなクラブにならないといけないとも思うので、そこはより目指したい。選手の顔もひとりでも多くの人に知ってもらいたいですから。 結果を出せば多くの人が関心持ってくれるのか、何が正解なのか分からない部分もありますが、やっぱり地域の方との触れ合いは大事で、そこは僕だけの力じゃどうにもならない部分がある。だからこそ、それぞれの持ち場で個々が高い意識を持って、結果も残せるような環境をできるだけ作っていきたいですね」 もっとも、サッカークラブとして、プレーのパフォーマンス向上を目指すのも当たり前のことだ。 「フットボールの基準はやっぱり高めていかなくちゃいけない。今年はそこをもう一回上げていくというところも、去年を経て、テーマになっていますよね」 その面でかつて川崎で関塚氏が指導をした寺田周平監督を今季は招聘。プロチームを率いるのは初となる教え子に白羽の矢を立てた背景はどういうものだったのか。 第2回に続く ■プロフィール 関塚 隆 せきづか・たかし/1960年10月26日、千葉県生まれ。現役時代は本田技研でFWとしてプレーし、引退後は鹿島でのコーチなどを経て、2004年からは川崎を率い、魅力的なサッカーを展開。その後はロンドン五輪代表、千葉、磐田でも監督を務め、昨年7月から福島のテクニカルダイレクターに就任。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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