27歳女性が「上場企業の新社長」に就任…華々しいスタートも、波乱の予感が
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。 女性向けのカジュアル衣料を扱うANAPが、27歳の若月舞子氏を社長に迎えると発表しました。上場企業の女性社長としては異例の若さ。 経営陣を一新して新たなスタートを切るANAPですが、業績回復に向けた道のりは波乱に満ちたものになりそうです。
「創業3年の会社」を1億円で売却した実績が
若月舞子氏は慶應義塾大学在学中、エキスパートとのマッチングを行うexpeetを起業。Appleが女性起業家をサポートするアプリ開発プログラムに日本企業として初めて認定されています。2021年4月にimmunityを創業。インフルエンサーマーケティングを駆使して女性用ショーツの販売を行いました。 この会社は2023年3月期の売上高が5億3600万円となり、前期の67倍に急増。黒字転換を果たしました。2024年2月にバッグの製造販売を行うバルコスが1億円で買収しています。会社を設立してから、わずか3年ほどでの素早いエグジットでした。 売却からほどなくして、ANAPの社長に招聘されました。10月3日の臨時株主総会と、その後の取締役会を経て正式に決定します。 創業者以外で、20代の女性が上場企業の社長に就任するのは極めて稀。ただし、ANAPが販売するファッションアイテムのメインターゲットは、10代後半から20代。顧客とファッション感覚を共有でき、若くして会社を急成長させた実績もあることから、そのかじ取りには期待ができます。 とはいっても、ANAPは事業再生ADRの手続きが成立したばかりで、事業再生の途上にある会社。売上減は深刻で、立て直しは簡単ではありません。
借入金返済の目処がたたずに債務を一部減免
ANAPは2023年8月期に11億円の純損失を計上。9億円の債務超過状態となりました。上場以来初の債務超過転落でした。今期も業績は回復せず、2024年8月期第3四半期累計で8億円の純損失を出しています。 債務超過額は17億円まで広がりました。ANAPはりそな銀行やみずほ銀行などの債権者から事業再生計画案について同意を得られ、およそ14億円の債権の減免を受ける予定です。 再生スポンサーとなって資金支援をしたのがネットプライス。ECサイトを扱う会社です。かつてサイバーエージェントの傘下にありましたが、BEENOS、オークファンを経て2020年にエムグループホールディングアンドキャピタルという会社に譲渡されています。 ANAPは2024年5月末時点で、20億円近い短期借入金(1年以内に返済期日を迎える借入金)がある一方、現金と売掛金を足しても4億円に届かない状態になっていました。再生スポンサーを見つけて債権の一部が放棄され、資金繰りには一定の目処がついたといったところでしょう。