ロランDGにブラザー工が予告TOB、問われる特別委員会の判断
(ブルームバーグ): MBO(経営陣が参加する買収)による株式公開買い付け(TOB)を実施しているローランドDGにブラザー工業が買収提案の開始を予告したことで、同社を巡る争奪戦が始まった。MBO以前にブラザー工が買収提案していたことが明らかになり、専門家からはロランDGのプロセスの公正性に疑問の声が聞かれる。
ブラザー工は13日、ロランDGに1株5200円で5月中旬をめどにTOBを実施すると発表した。ロランDGは、筆頭株主の米投資ファンド、タイヨウ・パシフィック・パートナーズと組んでTOBを1株5035円で2月17日-3月27日の日程で進めており、ブラザー工は「同意なき買収提案」の公表に踏み切るかたちとなった。
ロランDGはタイヨウを選定した際、他のPEファンド2社を含めて3社が参加した入札を実施した。しかし、昨年9月1日付で買収提案していたブラザー工は参加していない。同社はロランDGの入札プロセスが進んでいることを知らされていなかったとする。
昨年、経済産業省が示した「企業買収の行動指針」では、真摯(しんし)な買収提案に対しては真摯に検討することが基本だとされた。ロランDGは、発表資料の中でブラザー工の提案に触れ、「真摯な検討」を行ったとするが、専門家からは検討プロセスの公正性に疑問も呈されている。
高く売却する責任
ゴールドマン・サックス証券出身で、企業の合併・買収(M&A)の実務に詳しい早稲田大学大学院の服部暢達客員教授は「入札に呼ばないのは少々やり過ぎだ」と指摘する。ロランDGには「資産査定でブラザー工に提供する情報を合理的な範囲内に抑えたうえで、例えば1番値段が高かったら買収を確約させるなどのやり方があったのではないか」と話す。
同教授によると、競合他社が有力な買い手候補となるケースは多いが、最終的な買い手とならない限り、売り手企業の情報はライバルに流れてしまいかねない。ただ入札を実施する売り手企業の取締役会には、できるだけ高く売却する責任が伴うと、同教授は指摘する。