長寿世界一の日本 気になるのは男女差と「健康寿命」との差
5月15日に発表されたWHO=世界保健機関の2014年版『世界保健統計』によれば、日本の平均寿命は84歳。世界最長寿である。50歳を超えたのは、1947年。それからずいぶん延びたものだ。日本に住む100歳以上の高齢者は5万4397人(2013年9月15日現在、厚生労働省発表)。うち女性が4万7606人で87.5%を超える。 気になるのは、寿命の男女差だ。日本の女性は87歳で1位。2位スペインの85.1歳を大きく引き離しているが、男性は80歳で8位。平均寿命の長い国ほど男女間の寿命差は広がる傾向にあるが、それでも日本の7歳差は韓国と並んでかなり大きい。日本人男女の寿命差は、2000年以降、ほぼ7歳差で変わらない(2000年は女性84.60歳、男性77.72歳)。
なぜ日本は、男女の寿命差が大きいのか?
妊娠や出産など生物的なリスクを抱えている女性が長生きするには、栄養状態や保健衛生・医療環境の充実が前提だ。そのうえで、要因として考えられているのは、感染症や活性酸素に対する耐性の差といった生物学的要因、喫煙や飲酒率の差、危険な業務への就業率、健康に対する意識の違いや自殺率などである。 では、「社会的な男女格差」の影響は、どうだろうか。 女性の社会進出を示す指標に、世界経済フォーラムが発表する世界男女格差(ジェンダーギャップ)報告がある。政治・経済・教育・健康の4分野における男女差を数値化したものだ。昨年10月発表のデータによると、日本は調査対象136ヵ国中105位と過去最低。「女性の社会進出は遅れている」と烙印を捺されたわけだ。 また、OECD調査によれば、2012年度の24歳~54歳日本女性の就業率は69.2%。それに対しジェンダーギャップ調査で上位を占めた、つまり「男女格差が少ない」とされたアイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン各国の就業率は80%を超えており、その傾向は過去10年以上変わらない。そのうえで男女の寿命差を見てみると、アイスランドは3歳差(女性84歳、男性81歳)、ノルウェー、スウェーデンが4歳差(いずれも84歳、80歳)。フィンランドは6歳差(84歳、78歳)。いずれも日本より小さい。 この調査から見れば、日本女性の長寿世界一は「先進国の中で、日本女性の社会進出が遅れていたから」と言えなくもない。 いま、「男性は外で働き、女性は家庭を守る」という日本伝統の(?)規範が転換期を迎えている。政権も女性の社会進出をその目玉にしようとしている。現在、非正規雇用の70%は女性が占めている。また20代、30代女性の喫煙率や飲酒率は増加傾向にある。女性の社会進出が増え、それにともなう生活スタイルの変化で、平均寿命の男女差は変わっていくかもしれない。