吉報を待つ東陵・熊谷（撮影・木村有優）

　24日に行われるプロ野球ドラフト会議を前に、東北のドラフト候補選手を4回にわたって紹介する。 　第1回は東陵（宮城）左腕、熊谷太雅（たいが）投手（3年）。185センチの長身を生かした直球やキレの良いスライダーが持ち味だ。さらに、抜群の制球力とピンチにも動じない精神力も持ち合わせる。仙台育英戦での完投勝利がプロ入りを目指すきっかけとなった左腕が、運命の日を待つ。 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　野球は高校でやめて、パティシエになるのが夢だった。強豪食いが転機となった。2年秋。その年の夏の甲子園準V校を相手に1失点で完投勝利。千葉亮輔監督（53）からの「まだまだ上を目指せるぞ」の言葉が闘志に火をつけた。熊谷は「可能性があるなら挑戦したい」と最高峰の舞台を目指すことを決意した。 　入学早々、左肘のけがに見舞われ出遅れた。焦りを感じながらも体幹トレーニングなど、今できることを黙々とこなした。1年の12月。キャッチボールをみた指揮官は、成長ぶりに大きな衝撃を受けた。冬を越えると次々と強豪校を撃破。地道な努力が実を結んだ。 　今夏甲子園出場の聖和学園に敗れて、悔し涙をのんでから3カ月。高校野球を「70点」と振り返る。「現役の時からもっと体づくりを意識していれば…」。プロで戦える体を目指し、現在は体づくりに重点を置いている。現役時代は週2だったウエートも、今は部位を変えながら毎日行う。体重は9キロ増えて73キロ。課題と向き合い、足りなかった「30点」を補うために1歩1歩、進み続けている。 　運命の日まであと5日。互いに切磋琢磨（せっさたくま）してきた仙台育英からも、最速151キロの山口廉王（れお）投手（3年）がプロ志望届を提出。ライバル同士だった2人だが、今はともに同じ舞台を目指す仲間だ。日頃から連絡を取り合い、近況を報告し合っている。「甲子園に行けなくて悔しかったけど、ドラフトもあるので、そのために頑張ってきました」。積み重ねてきた努力を信じ、これまで味わったことのないうれしい報告を待つ。【木村有優】