『マイダイアリー』初回からエモーショナルな台詞が多数登場 佐野勇斗が新境地の役柄に
映画館で、ポップコーンを食べるのがちょっぴり苦手だ。静かなタイミングでしゃりしゃりと咀嚼音が鳴ると、「周囲に迷惑なんじゃないか?」とか、いちいち考えてしまうから。なるべく大きな音が鳴っているときに、一気に口に運び、シーンとなると咀嚼をやめる。正直、「食べた気がしないわ!」と思いながら。 【写真】見つめ合う優希(清原果耶)と広海(佐野勇斗) そんなわたしは、一緒に映画を観ている友人と、ポップコーンをシェアしたりするのは、もっと苦手。「あんまり食べてないから、わたしも控えておいた方がいいかな?」とか、「いやいや、食べなさすぎるのも、相手が気を遣うかな?」とか。そんなことを考えているうちに、映画に集中できなくなってしまう。だからこそ、『マイダイアリー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の優希(清原果耶)のエピソードに共感しすぎて、心が苦しくなった。 10月20日にスタートした『マイダイアリー』は、大学時代をともに過ごした仲間との何気ない日常と、そのつながりをノスタルジックに紡いでいくヒューマンドラマだ。『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)で、2023年10月度ギャラクシー賞月間賞を受賞した兵藤るりが脚本を手がけており、「孤独は、誰にでもある。でも、孤立はしちゃいけない」「優しさって、交換できたらいいですよね」など初回からエモーショナルな台詞が多数登場していた。 第1話の序盤、優希は交際していた恋人・和馬(新原泰佑)に“優しすぎるから”という理由でフラれてしまう。ポップコーンを食べるとき、優希は和馬の邪魔にならないようにちょっとだけ食べ、そのあとは、残り物を一気に食べていたようだ。そんな気遣いをされているうちに、和馬は「優希の優しさが苦しい」と思うようになっていった。この失恋は、母親に「優しい人になりなさい」と言われて育ち、「優しい人になりたい」と願いながら生きてきた優希の価値観を、大きく揺るがすきっかけになるはずだ。 「なんとなく日々は過ぎていって、折り返し地点に立っていたことさえ、やがて忘れる。そういうもの。それでいいんだと思っていた」 和馬と別れ、なんとなく毎日を生きていた大学3年生の優希の前に、数学に特異な才を見出されたギフテットの青年・広海(佐野勇斗)が現れる。広海は、アメリカの大学に進学するも挫折し、3年生の新学期から優希が通う大学の理学部数学科に編入してきたようだ。幼少期から知識欲旺盛で特別な存在として扱われてきたため、肩書きだけで先入観を持ってくる周囲の目に苦しむなど、対人関係に苦手意識を持っている。 佐野勇斗といえば、現在放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の四ツ木や、配信ドラマ『僕だけが17歳の世界で』(ABEMA)の航太など、どちらかというと“陽”に位置する“THE青春!”という感じのキャラクターがとてもよくハマる。もしくは、『僕の愛おしい妖怪ガールフレンド』(Prime Video)のハチ、『トリリオンゲーム』(TBS系)のガクなどの“オタク”キャラを演じることも多いが、本作のように完全に心にシャッターをかけた役柄はめずらしい。『ちはやふる-結び-』(2018年)で演じていた筑波に近いのかもしれないが、広海は天才でありながらプライドが高いわけではないので、まさに新境地と言えるだろう。 「友達とか、大丈夫なんで」と周囲を突き放そうとする広海の本音を察して、「いつ見ても、寂しそうなんだよなぁ」と気にかけてあげる虎之介(望月歩)と、優希の親友・まひる(吉川愛)&愛莉(見上愛)。ここに、広海と優希を含めた5人は、やがて“いつメン”のようになっていくのだろう。優希たちは、広海のことを特別扱いしない。広海が、「あんなふうに自然に受け入れてもらったの初めて」と言ったときも、優希は「ちょっと違うな。受け入れるとか、そういうんじゃないと思う。一生懸命生きてきたんだなって、感じただけだと思う」と返していた。