最高の「はなたれ」願い渾身の15日間 農家、職人、蔵子の思い一身に、匠の技を杜氏は振るう 杜氏の里笠沙で今季初蒸留 南さつま
鹿児島県内の各蔵元で新焼酎の仕込みが本格化する中、南さつま市の焼酎づくり伝承展示館「杜氏(とうじ)の里笠沙」が6年ぶりに新しい木樽(きだる)蒸留器に取り換え、今季初の蒸留を迎えた。麹(こうじ)作りから最初の一滴が出てくるまでの15日間を取材した。 【写真】熱気のこもる麹室で午前2時に米麹をかき混ぜ温度を調節=南さつま市の杜氏の里笠沙
仕込み開始は8月8日午前10時半。蒸した米に白麹を植え付ける。温度計と手の感覚が頼りの重労働だ。できた120キロの米麹は麹室(こうじむろ)へ。この日から杜氏らは蔵に寝泊まりし午前2時と4時に麹など確認する。 11日未明は、杜氏の黒瀬道也さん(51)と工場長の森聡さん(45)が麹室に入り米麹をスコップで切り返し冷ました。熱すぎると麹菌が死滅するからだ。室内は気温33度、湿度85%。汗が噴き出る。黒瀬さんは「われわれは麹の手助けをする役目。一生懸命やればこたえてくれる」と力を込めた。 甕(かめ)に米麹と酵母、水を入れ1次仕込み。6日目の15日、蒸した芋を加える2次仕込みをし8日間発酵させた。22日午前5時半から蒸留開始。約20分で「初垂(はなたれ)」と呼ばれる度数の強い原酒が出てきた。新樽由来の強い木の香りが漂った。 黒瀬さんは「いい仕上がりでほっとした」と笑顔。「焼酎は農家、樽職人、蔵子ら多くの人が関わりできあがる。渾身(こんしん)の力を込め続けたい」と語った。
■杜氏の里笠沙 南さつま市などが出資する第三セクターで、焼酎「一どん」など4銘柄を製造する。1993年設立。今季最初の焼酎は「星空の郷」として12月に販売される。
南日本新聞 | 鹿児島