【注目校に聞く】田園調布学園(上)「教科横断型授業」で知る学問のおもしろさ
100年近い伝統のある女子校、田園調布学園中等部・高等部(東京都世田谷区)は他校に先がけて「教科横断型授業」に取り組んできました。2022年度からは土曜プログラムで行っていた探究活動を、中1から高2までの授業「探究」とし、視野を広げる学びを拡大しています。探究は昨今の教育のキーワードですが、「時代に流されない」と語る清水豊校長に、プログラムに込めた思いを聞きました。
【話を聞いた人】田園調布学園中等部・高等部校長 清水豊さん
(しみず・ゆたか) 1963年生まれ。慶応義塾大学卒業後、公立中学に勤務。私立男子校に長年、勤める。教頭も経験し、2016年田園調布学園中等部・高等部の教頭に就任。20年から現職。
開けっ放しの校長室
――2016年に田園調布学園に赴任してこられたときには、どのような印象を持ちましたか。 生徒は素直で、しっかりきれいにまとめるのが上手だなと感心しました。それは長所でもありますが、物足りなさを感じたのも事実です。型を崩してもいいから、これまでとは違うことをするとか、おもしろいと思うことに挑戦するとか、やってみたらいいのにと思っていたのですが、ここ数年で、そういう雰囲気に変わってきたと思います。 授業もまじめに聞くなと思いました。前任の男子校では、授業で失敗したなと思うと、生徒は聞いていないとか、他のことをやるとか、わかりやすく態度に出していました。まじめなのはいいとは思いますが、気をつけないと教員も挑戦しないし、成長しないなと思いました。前任校では、教員同士がはっきりものを言い、やりたいことを提案して、つぶれそうだった学校を立て直した改革を経験していたので余計に、本校の教員からやりたいことがなかなか出てこないのは、なんとか変えたい点でした。学校は、教員がおもしろくないと生徒もおもしろくないものです。 ――校長になって、どのように仕掛けていったのでしょうか。 まず校長室を、ノックしなくてもいつでも自由に入れるよう、ずっと開けっ放しにしました。最初の頃は生徒から、「コロナだから換気で開けているのかと思った」と言われましたが、そのうちにフラッと訪ねてくる生徒が現れました。疑問に思ったらまずは聞いてみようという感じです。例えば、講堂朝礼はどうして立って聞かなきゃいけないんですかとか、オンラインではダメなんですかとか。講堂朝礼で話したことに関連する本を教えてほしいと言ってくる生徒もいます。 また「探究」では正解がない課題に取り組みますので、安心して思ったことを素直に言い議論できる場が必要です。よく授業を見て回るので、生徒に「暇なんですか」と言われますが、活発に議論している授業が増えています。生徒は探究の学び方に慣れ親しんでくると、一方的に教え込まれる授業や、常に正解だけを求める授業だと、つまらなく感じ満足しなくなってくるので、教員も変わらざるをえません。 教員同士の授業見学は、担当教科でもそれ以外でも奨励しています。教科横断型授業のある日には、当日先生たちにも伝えますので、熱心な先生は見学しています。