元プロ野球選手・加藤哲郎が麻雀プロになった経緯とは?初出場のモンド麻雀プロリーグ第18回名人戦への意気込みを語る
百戦錬磨のベテラン男性雀士10名による、円熟の技と巧みな心理戦による対局シリーズ「モンド麻雀プロリーグ23/24 第18回名人戦」。今回は、プロ野球選手、解説者、実業家などいろんな過去を持ち、プロ雀士になった加藤哲郎にインタビューを敢行。プロ雀士になった経緯、プロ野球とプロ麻雀で通ずるもの、初の名人戦への意気込みなど語ってもらった。 【写真を見る】「モンド麻雀プロリーグ24/25 第18回名人戦」の出場者 ――プロ雀士になられた経緯を教えてください 「元々麻雀プロになるつもりはなくて、7、8年ぐらい前から日本プロ麻雀連盟の黒木(真生)さんや他団体の方から『麻雀プロになったらどうですか?』という話をされていたんですよ。他の団体の方、連盟以外の方とも親しくしていただいていますし、1つの団体に入ることによって、プライベートでも関係の深い人達と疎遠になっちゃうのも嫌だったのと、ただ麻雀プロになっても意味があるのかなって。けど、一昨年の11、12月ぐらいに"年が明けたら60歳になる節目"でどうしようかなと思って。このまま何も事もなく歳を重ねていくのも、それはそれでいいんだろうけれども、何か刺激が欲しいなと...。麻雀界に10年ほど携わっているので麻雀プロになって、自分でけじめをつけた方がいいんじゃないかなと。それで黒木さんに話をして、その後、会長(森山茂和)も快く受け入れてくださいました」 ――麻雀との出会いを教えてください 「高校時代までは本当にもう野球しかやってなかったんでね。プロ野球に入って、先輩と一緒にパチンコ屋に行って、そこは2階に雀荘があって。夕方6時ぐらいになったら先輩がその上の雀荘で麻雀しているという話を聞いて、麻雀ってどういうゲームなのか知らなかったので、ルールも全然わからないんですけど見ていたら面白くて、僕にハマったんですよね。今だったら、携帯でもいろんなもので見られるのだろうけど、当時は近代麻雀を隅から隅まで読んでね。この後に、MONDOを観て面白いなと思って。そのときからずっとファンだから、僕の中ではMONDOの名人戦に出るって言ったら別格なんですよ。だから、話をもらったときにびっくりしましたね。まさかそんな機会があると思ってなかったんで。このお話をいただいたときには驚いたというか、嬉しいを飛び越してっていう感じでしたね」 ――野球にもたくさん魅力あると思いますが、それに負けない麻雀の魅力は? 「同じですね。やっぱり対人ゲームっていうのが一番ですね。心理戦なんですよ。相手が何を考えているかとか、今何をしたいのかとかそんなことばっかり考えているんで。本当に近いのは、勝負を避けるときは避ける。勝負するときはするっていうメリハリもちゃんとつけなきゃいけない。実際にプロに入って、一番初めのときにちょっと失敗しちゃったんですけど、たまたま前原(雄大)さんにアドバイスいただいたのが『自分のフォームを大事にする』っていう話で、一番肝心なところで野球と同じ感覚でやったらよかったのに。野球も麻雀も一緒なんですよね。自己中心に考えるんじゃなくて、あくまでも、自分のことを理解して、ある程度は相手のことを考えながらやる。主観と客観と第三者からの視点とっていう感覚で野球のときやっていて、それでうまくいっていたんですけど、そういう感覚で麻雀をやるようになってからちょっとうまくいく感じですね」 ――両方の世界を極められている原動力や意識は何かありますか? 「麻雀のことをちゃんと考えてしっかり向き合っていけば、勝ち負けとか損得じゃなくて、もっと違う部分に気付けるんですよね。特に今回の名人戦に出るときに思ったのは、結果じゃなくってやっぱりこの人が何を魅せているかっていう部分ですね。野球でもそうですけど、このピッチャーの試合が見たいなとかこのバッターが打つところが見たいとか...今だと、大谷くんとか。麻雀プロもこの人の麻雀を見たいという人を意識しています。だから、効率だけじゃない部分に重きを置いているところ、を自分の中で大事にしたいなと。今回、名人戦に呼んでいただいたときに、もう格好悪い麻雀だけはやめようって肝に銘じてやっています。プロになる前からもゲストで呼ばれたりしていましたが、プロになってゲストに呼ばれるのもまた全然違ってきていて、今は麻雀プロ・加藤哲郎の麻雀をやっぱり見てほしいっていう意識で、いつ見ても何かやっていて楽しいな、かっこいいなって思ってもらいたいなっていう風に心がけています」 ――プロとして昨年1年間を過ごされてきましたが、プロになる前とプロになってからの麻雀の向き合い方はいかがですか? 「やっていることは一緒なんですよね。ただ、全然麻雀していないんです。多分麻雀プロの中で一番少ないぐらいだと思います。だけど、僕は健康麻雀の先生をやっているんで、おばあちゃん相手に教えたりとかして、当然教室なんで僕は麻雀していても一切上がらず、あえて教えたりとかするだけなんです...それでも勉強になるという。こんな打ち方あるんだみたいな気づきがあったりするんです。健康麻雀のおばちゃんの山を後ろから見ているだけで、この人すげえな、みたいなとこがたまにあるんです。自分の考えだけでいろんなことをやろうとしても限度があるので、たくさんの人の打ち方を見る、本を見る、いろんなものを聞く...引き出しの多さがやっぱり大事だと思います。麻雀に限らず、いろんなものを見たり聞いたりすることによって、それでまた引き出しを増やす。あと、取捨っていう部分もありますけどね。そういうのが本当に自分で判断するって言ったら、月に1回か2回やるかやらないかぐらいですけど、ずっと教室でそうやって見ているだけでもすごい麻雀は上達しているような気はします。あとはもう自分の考え方一つですよね。人の麻雀を見て、俺ならこの牌切るのにな、とかって思うんじゃなく、この人がどう考えてそれをやっているのかの方が今は大事です」 ――今回出場されている選手の中で注目したり何か意識した選手とかはいらっしゃいますか? 「やっぱりね、みんな強いんですよ。だから、本当に対戦することが楽しみです。前原(雄大)さんとは何度か打っていますが僕は1回も負けたことないです!前原さんが言うんですよ『加藤さんに勝ったことないからな。僕も一生懸命やっているんですけどね』って。今回も前原さんには負けないように頑張ろうと(笑)。あとは会長(森山茂和)は迫力満点で超強いと思っているんで、気を引き締めて飲まれないようにしなきゃいけないですね。沢崎(誠)さんの強さをやっぱり各団体のプロも言っていますし、僕自身も見ていてすごいなと思うことがたくさんあるんで、僕自身がやっぱり楽しみにしています。沢崎さんと自分の対戦をテレビで見たいので放送もすごい楽しみです」 ――麻雀をする中で最も嬉しかったことは? 「名人戦に出られることですね。別格で嬉しいですよ 。本当にそれぐらい嬉しい。この名人戦っていうのは、僕と同じ年代もしくは僕よりちょっと上ぐらいの年代の人に言ったら、本当びっくりしますよ。メンツがメンツですからね」 ――結果次第では、王座の挑戦もありますが、そこに向けての目標とか意気込みを教えてください 「こういう場に出ると緊張する人も確かにいると思うんですけど、こんないいところに出させてもらって緊張するなんて勿体なすぎて。こんな檜舞台に立ったら、もう全部の力を出して、それで結果、うまくいかなかったら、これはただの力不足なのでしょうがないです。ただ緊張して力を出せないとか、僕の中ではありえないんですよ。野球しているときも緊張なんか絶対しなかったです。どこにいても絶対緊張しない。緊張したらもったいないからという気持ちがまずあるんで。大きな舞台になればなるほど、皆さんも俺のために集まっていただいているって思うので(笑)」 ――ご自身のスタイルやこだわり、曲げられないことはどこでしょうか? 「麻雀を損得で考えない。損が見えている範囲で自分が一番高い手を上りに行くっていう感じですかね。ただやっぱり変な打牌で放銃したりとかしたくないんですけど、勝負どころはまっすぐ前に出て、あとは取り返せばいいやっていう感じですか。潔くやる」 ――最後に視聴者さんに今回の名人戦の見どころをお願いします 「僕も本当にいちファンとして休憩時間も他の対局も全部見て楽しんでいるぐらい、すごい良い対局ばっかりだったので見逃せないと思いますよ。本当に最初から最後まで、いい対局ばっかりでした。さすが名人戦という感じだったと思います。僕自身も頑張りましたので、ぜひかっこいい麻雀を見てください。今回はMONDOファンには本当に楽しめると思います」 文=HOMINIS編集部
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