金利上昇へのリスク耐性が進む銀行:利益増加効果は前回利上げ局面を下回るか
円債のリスク量抑制が進んだ
日本銀行は4月18日に、「金融システムレポート(2024年4月)」を発表した。日本銀行が3月19日にマイナス金利政策を解除し、8年ぶりに政策金利引き上げに動いてから、初めて発行する同レポートとなった。 そこでは、金利上昇が金融機関の経営に与える影響が、大きな分析対象の一つとされた。全体として金融機関は、金利上昇に対する相応のリスク耐性を持っており、日本銀行のマイナス金利政策解除、追加利上げがもたらす各種金利の変化が、直ぐに金融機関経営に深刻な打撃を与え、金融システムの不安定化をもたらすリスクは大きくない。 金融機関の有価証券投資に関わる金利リスク量を、円貨については100bpv、外貨は200bpvで計算すると、金利リスク量全体の対自己資本比率は、大手行、地域銀行が20%程度、信用金庫が30%程度と、比較的低位に抑えられている。 ただし、リスク量の構成には大きな変化が見られている。世界的に金利上昇傾向が顕著となった2022年以降、大手行では外債のリスク量を復元する動きが見られた。他方で、日本銀行の政策転換などによる金利上昇リスクの高まりを受けて、円債については、大手行、地域銀行、信用金庫のいずれも円債のリスク量を抑制する動きがみられる。 円債のリスク量の抑制は、いずれの業態でもデュレーションを短期化させる形で行われている。さらに、時価評価を求められない満期保有目的の円債の比率を高めることを通じて、リスク量を抑制する動きもみられる。同比率は2022年から顕著に上昇しており、円債、外債共に5%程度から足元では15%程度まで上昇している。
金利上昇に対する耐性はかなり高まった
金利上昇によって有価証券の評価損が拡大し、自己資本が毀損されても(国内基準行についても、国際基準行と同様に有価証券評価損を自己資本に算入するとして計算)、自己資本比率が規制水準を維持できる上限の10年国債金利を計算すると、足もとで国内基準行、国際基準行共に8%程度にある。2022年以降、その金利水準は切り上がっている。 世界的に金利上昇が顕著となった2022年以降、国内銀行は円債についてリスク量の抑制を進めてきた結果、日本銀行の政策転換後も国内銀行は金利上昇に対する耐性をかなり強めたと言える。