ヘーツヘーツ 鎮守の森に響く 奇祭「蛙踊り」奉納/兵庫・丹波篠山市
「蛙(かえる)の宮さん」の名で親しまれる兵庫県丹波篠山市今田町上小野原の住吉神社で5日夜、伝統の神舞(かみまい)「蛙踊り」が奉納された。収穫の喜びと感謝を神に表す県指定無形民俗文化財で、同市三大奇祭の一つ。「ヘーツ、ヘーツ」「カエロ、カエロ」の独特の掛け声や締太鼓の音が鎮守の森に響き渡り、神秘的な空間を演出していた。 鶴と亀を染め抜いた紺色の素襖(すおう)と袴を着用した「小野原住吉神社神舞保存会」(藤本清仁会長、24人)の会員らが、約1時間にわたって「惣(そう)田楽」と「いず舞」の2つの踊りを奉納した。
中世の田楽の姿をよく留めた踊りで、惣田楽は稲の収穫風景を表現している。竹の短冊を88枚つなげた楽器「ビンザサラ」を手にした踊り手が、締太鼓の音に合わせて、「ヘーツ、ヘーツ」と低く唸るような声を発しながら、前屈姿勢でビンザサラを上下させたり、肩の上でねじったりする動作を繰り返し、ジャラジャラと音を鳴らして、刈り取った稲を稲木にかけ、脱穀するまでの作業を表現した。 締太鼓と踊り手が演奏を交代する際、「カエロ、カエロ」と声をかけることから「蛙踊り」と呼ばれるようになった。 いず舞は、田に舞い降りたツルが豊作に感謝し、舞を披露するという内容で、両手を広げて羽ばたきのしぐさを見せた後、勢いよくジャンプした。 蛙踊りは、10月の第1日曜日に営まれる「八幡祭」の宵宮に奉納される。