声優・大山のぶ代さん死去 90歳、9月29日に老衰で 「ぼく、ドラえもん」四半世紀いつもそばには〝あの声〟
アニメ「ドラえもん」の声を担当した声優で女優、大山のぶ代(おおやまのぶよ、本名・山下羨代=やましたのぶよ)さんが9月29日午後4時23分、老衰のため東京都内の病院で死去した。90歳だった。2005年まで26年間にわたりドラえもんの声で親しまれたが、13年頃に認知症を発症し16年から老人ホームで生活。翌17年に死去した夫で俳優、砂川(さがわ)啓介さん(享年80)との間に子供はなかったが、「ドラえもんはかわいい」とわが子同然にいつくしんだ。 「ぼく、ドラえもん」の温かい独特のしゃがれ声。人懐っこい笑顔でも親しまれた大山さんが天に召された。 この日、所属事務所が「老衰のため永眠いたしました」と発表。葬儀は親族で行った。喪主代理は事務所の小林明子さんで、お別れ会は現時点で予定していないという。 関係者によると、大山さんは、夫の砂川さんが尿管がんと診断された際に選んだ施設に2016年から入居。以降、同施設で病気を患うことなく生活していたが、今年に入って体調を崩し、入退院を繰り返していた。最後の入院は9月19日。29日午後、病院から危篤という連絡を受け、関係者が駆け付けたが間に合わなかったという。 棺には〝分身〟であるドラえもんのぬいぐるみや砂川さんの写真、好物のようかんなどが納められた。戒名には、ドラえもんのみならず「サザエさん」の初代・磯野カツオなど多くの役の声を演じたことから「響」の文字が入れられた。納骨は済んでおり、愛する夫と同じ墓に入ったという。 大山さんは俳優座養成所を経て、海外作品の吹き替えを務めたのをきっかけに声優となり、「ハリスの旋風」「ハゼドン」などアニメ作品で活躍。ドラえもんは、原作者の藤子・F・不二雄さんが「ドラえもんって、こういう声だったんですね」と言うほどのはまり役に。テレビ朝日系で1979年から2005年まで務め、「ぼく、ドラえもん」のせりふを子供たちがまねするなど幅広い世代から愛された。 ドラえもんの声はほとんど地声で、中学生のとき同級生から笑われ、無口に。そのとき、母親から「弱いところをかばっては駄目。声を出すようなクラブに入りなさい」と勧められ放送研究部に入り、人前で話したり演じるのが好きになった。ドラえもんで心がけたのは、子供向けアニメのため汚い言葉は使わないということ。のび太の友達でも兄弟でもあり、時には母親代わりにもなる。「できる限り普通の男の子のようにゆっくり話すようにしました。ドラえもんはわが子のようで、何か迷ったときは相談していました」と目を細めて語っていた。