社説:子どもの自殺 SOS見逃さぬように
自ら死を選ぶ子どもが後を絶たない。命を救うために何ができるか。原因や背景を丁寧に探り、予防策の実効性を高めなければならない。 政府の自殺対策白書によると、2023年の小中高生の自殺は513人に上り、過去最多だった前年の514人と同水準となった。京都府や滋賀県でも20歳以下の自殺は増加傾向にある。 児童生徒の自殺は新型コロナウイルス禍に入った20年に前年比100人増の499人と急増した。日常生活の制限からくるストレスが要因と見られたが、コロナ禍の収束後も高止まりしたままだ。 国や自治体、教育委員会、学校はもとより、社会全体で深刻に受け止め、手を尽くす必要がある。 子どもの自殺の理由は特定するのが難しい上、友人関係や家庭、病気などの複合的な背景があり、周囲にうまく伝えられないことも多い。しかし、本人がSOSのサインを発している場合も少なくないと白書は指摘する。 22~23年に自殺した小中高生1027人の自殺未遂歴を調べたところ、約2割で経験があり、女子高校生では4割近くに上った。 このうち自殺から過去1年以内に未遂があったケースは過半数を占め、特に小学生と高校生の女子では未遂から1カ月以内の自殺者が目立った。身近な大人がこうした兆候を見逃さず、専門家のサポートにつなげていれば、最悪の事態を防げた可能性もある。 10代の死因の1位が自殺であるのは、主要7カ国(G7)の中で日本だけだ。政府は昨年、関係省庁が連携して緊急プランをまとめたが、課題とされた多角的な原因分析や具体的な体制整備が急務である。悩みを抱える人に気付き、必要な支援を行う「ゲートキーパー」(命の門番)の養成や、民間団体が行うSNSでの相談窓口の活用、多様な居場所づくりなど、さまざまなアプローチで自殺のリスクを摘み取りたい。 全ての年齢層への対策も欠かせない。23年の自殺者は京滋で計約660人、全国では2万1千人超と深刻なレベルが続いている。 原因では「経済・生活」の増加が目立つ。厚生労働省は「物価高などを背景とした生活苦が要因の可能性がある」と分析する。 06年に制定された自殺対策基本法では「自殺は個人的な問題ではなく社会の問題」と明示された。貧困や孤立に悩む人への支援策をはじめ、生きる希望を紡ぐためのセーフティーネットを築きたい。