哲学者が親の介護で理解した「孤独を抜けだせない人」の一つの特徴
他者に助けを求め、他者の力になる
しかし、自由に生きることは、誰にも理解されなくてもいいのだと孤高を持することではありません。他者に理解してもらおうと思わないと書きましたが、厳密にいえば、他者が自分の苦痛を理解することを当然と思わないという意味です。 他者に理解されることを期待せず、他者に合わせずに自由に生きようと思っても、他者の援助が必要な時はたしかにあります。そのような時は援助を求めてもいいし、求めなければなりません。 他方、他者の力にならなければなりません。自分は他の人に理解されようと思わず自力で困難を解決しようとし、他方、他者から援助を求められたら努めて援助したい。皆でなくても、多くの人がそう思うようになると、世界はずいぶんと生きやすくなるでしょう。 他者に合わせなければ、孤独になるかもしれません。しかし、自分と同じように他者の困難を理解し援助しようとする人がいるかぎり、孤独になっても孤立することはないでしょう。皆に理解されようと思わず、自分を理解し援助しようとしてくれる人とだけつながるべきです。 苦痛は個人的なものなので、他者の苦痛を理解するのは困難ですが、自分の苦痛に無関心ではなく、できることがあれば援助しようとしてくれる人はいます。その人とつながっていると思えれば、そのことが孤独を克服する力になるのです。
岸見一郎(哲学者)