怪しい投資、持ちかけたのは関西弁のシカ 詐欺防止に警察が映画制作
店の資金繰りに困る男性の隣で「元本保証やしなあ」「だまされた思(おも)てやってみ」としゃべりかける鹿――。奈良県警奈良署が投資詐欺の被害防止を呼びかける短編映画を制作し、奈良市内で上映会を開いた。被害が急増する中、同署が同市出身の映画監督に依頼し、実現した。 【写真】山嵜晋平監督=2024年10月7日午後3時23分、奈良市登大路町、周毅愷撮影 上映会は10月7日に奈良公園バスターミナルレクチャーホールであり、約150人が鑑賞した。 映画のタイトルは「しかとせん」。奈良市を一望できる若草山でたたずむ男性に、「神の使い」と称する鹿がそっと近づいてきて、東南アジアのITビジネスへの投資を促す。その気になった男性は……という内容。 6分ほどの短編だが、鹿の時折見せる神妙な顔つきや、関西弁での巧妙なやりとりに、会場内は笑いに包まれた。 手がけたのは奈良市出身の映画監督、山嵜晋平さん(44)。上映後、「だまされる人の顔を想像しながら作った。お世話になった人たちに嫌な思いをさせたくない」と心境を語った。身近に感じてもらえるよう意識したといい、「構えず、気楽に、面白がってくれたら」と呼びかけた。 奈良市内から上映会に訪れた花田駿太郎さん(82)は、「鹿がいきなり詐欺の手口で話し始めるとは思わなかった。内容も面白かったので、周りの人に勧めたい」と話した。 同署生活安全課によると、今年9月末までに県内全体で発生したSNS型の投資・ロマンス詐欺は198件、被害額は約27億円。昨年の同時期と比べて、発生件数は166件、被害額は約22億円増加しているという。豊田洋平・生活安全課長は「短編映画は手口が短くまとまっている。ぜひ多くの人に見ていただきたい」と話した。 短編映画は、奈良県警のユーチューブ公式チャンネルで公開中(https://www.youtube.com/watch?v=flHt71NBcxw)。(周毅愷)
朝日新聞社