山本奈衣瑠にブレークの予感 世界を魅了する〝等身大の日本人〟「ココでのはなし」
「ココでのはなし」で主演した山本奈衣瑠は2024年、「SUPER HAPPY FOREVER」などメインキャストとして出演した作品が4本も公開される。モデル出身でフリーマガジンの編集長も務め、今泉力哉監督の「猫は逃げた」(22年)で俳優として映画デビュー。「ココでのはなし」は世界14大映画祭の一つ、ワルシャワ国際映画祭など10以上の海外映画祭に出品され、受賞もしてきた。ブレークを予感させる注目株。こささりょうま監督は、山本を「親しみやすさとカリスマ性は、世界の人に伝わる」と絶賛した。 【写真】ポーズをとる「ココでのはなし」のこささりょうま監督と山本奈衣瑠
コロナ禍、ゲストハウス、人とのつながり
「ココでのはなし」は、こささりょうま監督のデビュー作。こささ監督は、コロナ禍の緊急事態宣言が出ていたさなか、外出できず「自分は何もしていない」とふさぎ込んでいたある日、「『何もできていない』は『何もしていないわけじゃない』」という言葉に出合った。「同じように感じていた人たちと、肩を組める映画を作りたい」と思ったのがこの作品が生まれたきっかけだ。「東京に来て夢を追うことができず、鍋を真ん中に置いて離れて話す映像が浮かんだ。友人や仲間との距離感を、ゲストハウスを舞台に描けないか」。バックパッカーの経験があり、初対面の人と一晩で仲良くなる、ゲストハウスの文化を熟知していた。 物語の舞台は2021年、東京オリンピック開催直後のゲストハウス「ココ」。コロナ禍で客足が戻らない中、住み込みアルバイトの詩子は、元旅人でオーナーの博文、SNSにはまる泉さんとで宿泊客を迎えていた。やってくるのは、パラリンピックのボランティアで知り合った障害者から引っ越しの手伝いを頼まれたフリーターの湯島存、アニメ好きの友人が働く不動産会社への就職を決め、引っ越しの内見で上京した中国人のワン・シャオルーら。詩子自身も母を亡くし、過疎地域での父との暮らしから逃げ出してきた。悩みを抱えた若者たちの物語がつづられていく。
真っ先に浮かんだ〝愛すべき日本人〟
主演に、と望んだのが山本奈衣瑠だった。こささ監督は「日本人として等身大に生きている山本さんが真っ先に浮かんだ」と明かす。「世界から日本人がどう見えているか。山田洋次監督の映画に登場するような愛すべき日本人として、詩子のキャラクターを思いついた。山本さんの視線の送り方とかコミュニケーションの取り方がぴったりだったし、一番好きだったのは声」と魅力を列挙した。 「海外の映画祭を視野に入れていた」というこささ監督は、ゲストハウスは世界中に浸透し親和性が高いと感じ、山本にも可能性を見いだす。「日本人にとっても接しやすく、親しみやすい雰囲気があって、一方でカリスマ的な存在でもある。外国人からも等しくそう見られるだろうとずっと思ってきた」 横で聞いていた山本は少し照れくさそう。「意識していないこと、自覚がなかったものをほめてもらって、うれしい。役者の仕事はまだ分からないことばかりだが、自分が生きてきた過去を肯定してもらったような感覚」と目を見開いて話した。