選挙カーから「裏金を作るとか、私的流用を図るとか、ましてや脱税とか、そのような事実はございません」と説明する萩生田氏

新政権発足後、即解散・総選挙に踏み切った石破茂新首相。各地で慌ただしく戦いへの準備が進む中、15日に公示日を迎えた。裏金問題が尾を引く与党・自民党、野田新代表で巻き返しを図りたい野党・立憲民主党。候補者たちは目がギラギラ。現場は熱気ムンムンだ。衆議院議員選挙2024、その注目選挙区の人間模様をナマ取材した！【衆院選"人間激場"注目選挙区全力ルポ　東京24区編】 【写真】JR八王子駅前で第一声を上げた有田氏 ＊　　＊　　＊ 東京24区は"裏金問題の最注目選挙区"だ。総選挙初日の10月15日、立憲民主党公認候補の有田芳生（よしふ）氏（72歳）は、JR八王子駅前で第一声を上げた。 「裏金は2728万円。これは5年間の合計です。裏金作りは20年前から行なわれていた。じゃあ、総額はいくらになるのか。さらに、人の不幸につけ込んで、不当に高額なつぼや印鑑を売り続けてきた旧統一教会とベッタリの政治家がいる。そんな政治はもう終わらせようではありませんか」 立憲民主党の野田佳彦代表も有田氏の応援に駆けつけ、演説でこう語った。 「私が第一声をここにしたのは、ひとつは裏金議員がいること。そして、もうひとつはその裏金議員を裏から支えてきた旧統一教会と結びつきの強い人がいるからです」 野党第1党の立憲民主党は、自民党から公認をもらえず、無所属として東京24区から立候補している前職の萩生田（はぎうだ）光一氏（61歳、元自民党政調会長）を裏金問題と旧統一教会問題で追い詰めようとしている。 一方の萩生田氏は、同じくJR八王子駅前で行なわれた出陣式で、裏金問題について次のように説明している。 「昨年来、私の政治資金の収支報告を巡って、政治不信を招く事態となってしまいました。派閥のルールを踏襲したとはいえ『これでいいんだろうか』と考えなければならなかったと反省しております。不記載は確かにあったんですが、司法の場で明確に判断いただき、現在はすべて修正を終えて正常化したところです」 ただ、批判する立憲民主党などの候補については、「批判をするためだけにこの地を選んだ野党候補がいる」とバッサリ。 萩生田氏は自民党非公認の候補だが、第一声に集まった応援団はまるで公認候補のようだった。自民党東京都連の井上信治会長、元女性活躍担当大臣の有村治子参議院議員、初宿（しゃけ）和夫八王子市長らそうそうたるメンバーが駆けつけていたのだ。当選6回を数える"萩生田帝国"は非公認になっても健在のようだ。 一方、初日の夕方に八王子駅前で行なわれた有田氏の2回目の演説に集まった応援団はまさに多種多様だった。 立憲民主党のほかに、日本共産党、生活者ネットワーク、無所属、社民党の八王子市議たち。そして、新社会党の東京都本部副委員長や東京24区選出の元自民党衆議院議員・小林多門氏ら党を超えた応援態勢がつくられていた。 小林氏は「東京24区を萩生田光一氏にバトンタッチした。これが人生の大失敗」などと語り、聴衆に有田氏への応援を求めていた。 非公認になって落選の危機ともいわれている萩生田氏だが、「非公認になって逆に支援者の結束力が高まっている」との見方もある。八王子で生まれ育った萩生田氏は、古くから住んでいる人たちとのつながりも深い。 「私は萩生田さんが小さい頃から知っているけど、すごくいい人。どうしてあんなことになっちゃったんでしょうね。私は応援しますよ」と70代の女性は言っていた。 有権者の選択はいかに。 取材・文・撮影／村上隆保