子どもを幸せにする非認知能力「創造性」の育み方 「目に見えない世界」に心を遊ばせよう
こうした創作課題は、クラスが進級しても時々出題しますので、中学生・高校生も素晴らしいストーリーを創ってくれます。語彙も増え、筆力も年々上がるわけですから、学齢が進むにつれ表現力が磨かれるのは当然のことです。ですが、爆発的な創造力の伸び、大人の想像を超える奇想天外なストーリー展開を考え出す力、という点においては、やはり入門クラスの小学生たちに敵わないのです。 ■子どもの「目に見えない世界」を否定してはいけない
これは一概に、小さい子ほど創造性に優れているということではなく、心が現実と非現実の境界を行ったり来たりしている時にしか、創造性というものは大きく伸びないからではないか、と私は考えています。 小さい頃は、誰もが目に見えない世界に心を遊ばせられます。ですから、妖怪や妖精や魔法使いが出てくる物語を読むだけで、まるで自分がその世界に入り込んだように、ハラハラ、ドキドキしながら、リアルに物語世界を楽しむことができるのです。
ところが、学齢が上がり、そういうファンタジーの世界、非現実の世界を「どうせ作り話だろ、くだらない」と否定するようになると、その子の創造性は急速に萎縮してきます。目に見えるもの、手で触れられるものにしか価値を見出せなくなるために、想像の中で新たな価値あるものを生み出すことが難しくなってくるのです。 ですから私は、お預かりしたお子さんたちの心を、できる限り長く「現実と非現実の間」に置いておくことを心がけています。目に見えない世界を否定せず、愛や正義や勇気といった、手に取ることのできないものにこそ価値があるのだと繰り返し語りかけ、本やアートや哲学を用いて、可能性に満ちた子どもたちの柔らかな創造性を刺激し続けているのです。
例えば、こちらは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派の画家、アンリ・ルソーの「眠るジプシー女」という作品。草一本生えない不毛な砂漠で、月明かりの中、1匹のライオンが疲れ果てて眠るジプシー女に近づいている絵です。教室では、子どもたちにこの絵をじっくりと鑑賞してもらい、どうしてライオンが女性に襲いかからないのか? その理由を想像して説明文を書く、という課題に取り組んでもらいます。