公立小中学校の体育館で進まぬ冷房設置 熱中症のリスクや災害時避難所としての利用に不安の声
中国地方の公立小中学校で体育館への冷房設置が進んでいない。2024年9月時点の設置率は5・9%で全国の18・9%を大きく下回る。設置がゼロの呉市では、児童生徒の熱中症のリスクや災害時に避難所として使う際の居住性を不安視する声が出ている。 【表】公立小中学校の体育館の冷房設置率 文部科学省によると、中国5県の冷房設置率は広島11・6%、岡山3・8%、島根3・5%、山口2・8%、鳥取2・6%。最も高いのは東京の88・3%。体育館への冷房設置は全国でも普通教室(99・1%)や、図書室などの特別教室(66・9%)に比べて低い。 呉市教委学校施設課によると、市内の校舎は昭和期に建てた体育館が多く、ほとんどは断熱性能の低さから冷房効率の悪い構造だという。冷房を導入した場合、1施設につき10台ほどが必要で、費用は6千万~7千万円になると試算する。 バスケットボール部所属の中学生の娘がいる同市の母親は「扇風機を回しても大量の汗をかき、健康被害が心配。避難所になった場合、安心に過ごせるのか」と話す。広島県教委によると、県内23市町で設置率0%は呉市を含め、広島、福山市など14市町に上る。 国は災害時の避難所としての役割も想定し、設置に関する補助金制度を11年度に創設。23~25年度の新規申請については、事業費の補助率を従来の3分の1から2分の1に引き上げた。 ただ、呉市教委の担当者は断熱性に一定の基準が設けられていることがネックになるとし「断熱化の工事もすると費用は膨らむ。どの自治体も悩んでいる」と説明。鳥取県教委は「要望は多いが、校舎の耐震化やトイレの洋式化も必要で手が回らない」とする。 政府は、開会中の臨時国会に提出した24年度補正予算案に学校体育館の空調の整備費779億円を盛り込んだ。文科省の担当者は「自治体の事情はそれぞれあるだろうが、夏場の安全確保や防災の観点を踏まえ、補助金制度の周知を図りたい」としている。
中国新聞社