旧宮城野部屋と一門のチカラ~リスタートで盛況必至の夏場所
隅田川からの心地いい風が漂う5月の東京・両国国技館はいつも、大相撲夏場所の舞台となる。3月の春場所後は土俵外でもいろいろな出来事があった。元幕内北青鵬の暴力事案はその一つで、所属していた宮城野部屋が当面閉鎖されて全員で伊勢ケ浜部屋に転籍した。元横綱白鵬の宮城野親方は師匠の座から降り、部屋付きとして出直し。新伊勢ケ浜部屋勢の動向をはじめ、12日に初日を迎える今年の夏場所は、リスタートという観点から見ても面白さが増してきそうだ。
大所帯に引退決意も
日本相撲協会の資料によると、伊勢ケ浜部屋の力士数は春場所の20人から夏場所では一気に2倍の40人に増え、角界一の大所帯となった。4月7日に引っ越しを終え、早速稽古が始まった。宮城野親方は自ら白まわしを着けて稽古場に降りるなどして、指導に当たっている。今後は、伊勢ケ浜一門から協会理事に選ばれた浅香山親方(元大関魁皇)と役員待遇でもある伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が場所ごとに、宮城野親方や部屋の状況について協会へ報告することになっている。関係者によると、両親方は夏場所前から連絡を取り合い、ケアを継続させている。 今回の措置は、元北青鵬のエスカレートした暴力行為に関し、監督義務や報告義務の違反などで宮城野親方にも2階級降格など重い処分が下り、部屋の師匠として素養が欠如していると判断されたことに起因。伊勢ケ浜一門と協会執行部が春場所中も話し合いを重ね、伊勢ケ浜部屋への無期限転籍でまとまった経緯がある。一門の関係者によると、旧宮城野部屋の幕下以下の複数力士は転籍を機に、現役を引退する意向を固めているという。ある部屋持ちの親方は「今回に限らず、部屋が一緒になるときというのは昔から進退を考える力士が出てくるもの。ある程度は仕方ない面もある」と指摘する。 ただ、続けていく力士たちは新たな環境に適応しようと励み、稽古相手が増えた状況で切磋琢磨。横綱照ノ富士や東前頭筆頭の熱海富士ら6人の幕内力士に加え、旧宮城野部屋の十両伯桜鵬がいる。関取7人も部屋別最多で、夏場所の成績にどうつながるかに関心が集まる。