【大英帝国から連綿とつづく貴人の義務(noblesse oblige)の精神】苦境のスリランカを支えている大英帝国のレガシー
英国発祥YMCA精神の普遍性
12月2日。キャンディー市街の商業地区の真ん中にYMCAがあった。1905年創設というから日露戦争の頃だ。キャンディーYMCAの代表者のD氏に話を伺った。 YMCAは1844年に英国国教会の支援の下でジョージ・ウイリアムスがロンドンで創設した。YMCAの最大の特徴は宗教・人種・民族を一切問わない全ての青少年に開かれた教育・体育・福祉・文化活動推進団体であることだとD氏は強調。 人口12万人の高原都市キャンディーの住民のマジョリティはシンハラ族の仏教徒だが、ヒンズー教徒のタミル族、色々な宗派のキリスト教徒、回教徒も多数居住している。 現にこの商業地区にはカトリック教会、長老派教会(presbyterian)、メソジスト教会、洗礼教会(Baptists)などのキリスト教会はじめ、二つのヒンズー寺院、三つの回教寺院が共存していると指摘。そして商業地区は仏教の聖地仏歯寺と英国国教会の敷地に隣接している。こうした異なる宗教・異なる民族の青少年が一緒になって活動することで共存共栄(good inter harmony)が実現できるのだとD氏は力説した。 そしてスリランカが一つの国家(one nation)として発展するためには異なる人々がお互いに認め合う寛容(mutual generosity)が不可欠ですと説いた。筆者は話し方から察するにD氏のバックグランドは聖職者だろう思った。そしてD氏の脳裏には20年以上続いたヒンズー教徒タミル人による内乱への思いがあったのだろう。
大英帝国から連綿とつづく貴人の義務(noblesse oblige)の精神
財政破綻したスリランカでは政府予算の欠如から教育・医療・福祉など様々な分野で問題山積である。そのなかで慈善団体の活動が社会に一条の光を放っているように思えた。コロンボの国立病院では日本の福岡とコロンボのライオンズクラブから共同寄贈された救急車が活躍していた。シーギリヤの公立学校は資金不足で校舎の雨漏りも満足に修繕できない有様だったが、アヌラダープラのロータリークラブが50万円の資金を集めて楽器を寄付していた。 12月25日。ビーチリゾートのヒッカドウアで中堅ホテルを経営するK氏は地元のライオンズクラブの副会長。慣例により次年度は会長を務めるという。ライオンズクラブでは地域の基幹公立病院に最近小児科専用のICUを寄付したので先週病院に活用状況を確認に行ってきた。またライオンズクラブでは地域の貧しい子供たち約800人に就学支援しており、今週末は子供たちの発表会があるので参列するという。 朝から晩まで働き詰めのK氏を見ていてボランティアのために時間を割くことが如何に大変なことなのか想像できた。しかしそんな個人的な事情はおくびにも出さず淡々と慈善事業の意義と目的を説明してくれた。そんなK氏からはノブレス・オブリージュを果たさんとする確固たる使命感が伝わってきた。 以上 次回に続く
高野凌