「保育園育ち」と「幼稚園育ち」で“差”は出る? “園選び”に重要な2つのポイント
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質問:「保育園育ち」と「幼稚園育ち」で違いは出る?
この質問に答えてくれるのは…… 乳幼児教育学、保育学、子育て支援が専門の玉川大学教育学部教授・大豆生田啓友先生。 回答:それは昔のイメージ。どちらでも遊び込める環境が大事です この10年で共働き家庭がかなり増え、今は保育園に通う子が多くなっています。「保育園は生活する場所」「幼稚園は教育 を行う場所」というのは、過去のイメージです。幼稚園は幼稚園教育要領、保育園は保育所保育指針、認定こども園は幼保連携型認定こども園教育保育要領というのが国から出ていますが、3歳以上についてその内容はほとんど共通しています。 基本的にはどちらにも共通の教育(子どもを健やかに育てること)があります。学力に差が出ることを懸念する方もおられますが、今は保育園・幼稚園からスムーズに小学校へ接続する「架け橋プログラム」の取り組みもあり、先取りした教育をあまり心配する必要はありません。また、文字の読み・書きといった能力(=「認知能力」)は、先取りして身につけてもいずれ差はほとんどなくなるという研究もあります。
むしろ成長後に影響をもたらす可能性があるのは、目に見えにくい心や社会性の側面だと言われています。何かに熱中する意欲や、他者を思いやること、気持ちをコントロールする力、やりぬく力など、「非認知能力」(社会情動的スキル)が育まれていると、将来のウエルビーイング(心・身体等の幸せな状態)につながる可能性があると言われています。 質を高めている園の多くは、保育園でも幼稚園でも「非認知能力」を基盤とした育ちを重視する傾向にあります。そのために大切なふたつのポイントは、「一人ひとりがあたたかく受け入れられること」「〝遊び込む〞経験がしっかりできること」です。先取したお勉強的、一斉管理型の教育ではありません。これらを備えた園かどうかが、保育園・幼稚園にかかわらず、とても重要なことです。それは、単に幼稚園か保育園かの違いではありません。
大豆生田啓友 先生
玉川大学教育学部教授。専門は乳幼児教育学・保育学・子育て支援。青山学院大学大学院文学 研究科教育学専攻修了後、青山学院幼稚園教諭等を経て現職。日本保育学会理事、こども環境学会理事。こども家庭「 こども家庭審議会」(親会)委員および「幼児期までのこどもの育ち部会」委員(部会長代 理)。NHK Eテレ『すくすく子育て』をはじめ、TV出演や講演活動など幅広く活動中。『非認知能力を育てる「しつけない」しつけのレシピ0歳~ 5歳児の生活習慣が身につく』( 講談社 、共著) ほか著書多数 。