[深層一直線]激動の世界情勢 ほぐす役割…右松健太
お笑い、スポーツ出番の時
年末年始はテレビがにぎやかだった。普段テレビをつけると、仕事柄、報道番組にチャンネルを合わせてしまいがちなのだが、年末年始ばかりは、テレビの前で漫才コンビの話芸に腹を抱えて笑ったり、アスリートの躍動に手に汗握って応援したりして過ごすのが楽しかった。 【写真】「深層NEWS」本番直前、進行を確認する右松キャスター
先月下旬、若手漫才師の日本一を決める「M―1グランプリ2024」が行われた。大会には過去最多の1万330組がエントリーしたという。馴染(なじ)みの“出囃子(でばやし)”がかかり、万雷の拍手が迎えるなかを、1本のスタンドマイクめがけてステージに飛び込む。「出番」をつかんだ一握りの漫才師たちは、真正面にライトを浴びながら爆笑を誘う。その裏では、技術を磨き、時に辛酸をなめながら、想像を絶する努力を重ねてきただろうと、光を受けて背後に伸びた影に感じた。何かと気持ちも沈みがちな暗い世相にこそ、“お笑いの出番”だと思いたい。年忘れ、初笑い――。年末年始のいくつものお笑い番組に、心がほぐされた。
正月の風物詩ともいえるスポーツイベントも目白押しだった。今月2、3日に行われた東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)では、沿道に詰めかけた多くの声援を追い風に、各チームが、仲間の汗が染みこんだタスキをフィニッシュまで運んだ。チームメートが勝利に向かって心を合わせ、また競技を戦った者同士が健闘をたたえあう姿も、分断が叫ばれる時代に、“スポーツの出番”だと意味を見いだしたくなる。そして、そのなかで「出番」を勝ち取りスタートラインに立った選手たちは、重圧の日々と、人知れぬトレーニングを乗り越えて、持てる力を発揮し、胸が震える感動を届けてくれた。
今年はどんな1年になるだろうか。今月召集される通常国会で石破茂首相は、過去最大規模となる来年度予算案や、先の国会で結論が事実上先送りとなった企業・団体献金の扱いについて、少数与党として再び向き合う。円滑な国会運営のために譲歩を見せた臨時国会とは異なり、夏の参院選をにらんで与野党の駆け引きが一層強まり、「党利」ばかりを優先することにならないか。