乗ってみてわかった…!大阪万博の目玉「空飛ぶクルマ」の運行許可が遅れている「意外な理由」
時速130キロだが飛行可能時間は……
卵のような形をした二人乗りのコックピットから大きく張り出した何枚ものプロペラは、巨大なドローンのようだ。 【画像】車のナンバープレートで絶対に「使ってはいけない」4つの平仮名 跳ね上げ式の扉に頭をぶつけないよう気をつけながら機体に乗り込み、スポーツカーのような硬いシートに腰かける。室内で目に入るのは12インチのディスプレイだけ。その先には窓越しに広い視界が広がっていた。 飛行機やヘリコプターの操縦席にあるような計器類がないのは、あらかじめプログラムされたルートを飛行する自動航行方式を採用するためだ。計器類がないぶん足元も広々とし、両足を伸ばしてもまだまだ余裕があった。 6月5~7日まで幕張メッセで開かれたドローンの展示会「Japan Drone」。1年後に迫った大阪・関西万博で商業運転を目指す「空飛ぶクルマ」が搭乗体験できるとあって、機体の周りには順番を待つ行列ができていた。 展示された空飛ぶクルマは、EHang社(中国)の「Ehang216」。機体の外周に16個の電動モーターとプロペラを張り巡らせた姿はドローンと同じ。最大積載量は220キロというから、大人二人と手荷物を積み込むことが可能だ。時速130キロで高度3000メートルを飛ぶことができるが、バッテリーが切れるまでの飛行時間は21分だ。
気になる安全性
空飛ぶクルマの開発は世界約30社で進む。EHang社は早くから開発に乗り出した先行企業の一社。数千時間のテスト飛行を終え、現在およそ1200台の注文を抱える。 同社の機体を導入して運航を目指す株式会社AirX(東京都)執行役員の藤園光英氏はこう話す。 「価格は1機約35万ドル(約5400万円)で、複数機を導入しました。この機体はドローンでは運べないような大きな貨物を運ぶ用途に使用します。乗客を乗せるのは最大6人が乗れるブラジル製の機体。そちらの価格は1機約1億円です。空飛ぶクルマは電気を動力とするため二酸化炭素の排出がなく騒音も少ない。離島間や都市間のコミューターとして、6年以内の運航を目指します」 同社は大阪・関西万博での商用運航には参加しないものの、すでに沖縄やつくば市などでデモフライトを3回実施。パイロットが操縦する形で商業運転をスタートし、いずれは乗客だけを乗せた自立航行へ移行するという。 渋滞を気にせず空の短距離移動が実現すれば、交通網は大きく変化する。一方、気になるのは安全性だ。 「たとえばヘリコプターでは双発機でもエンジンは2個ですが、この空飛ぶクルマにはプロペラが16基。つまりエンジンが16個あるのと同じで、1機のプロペラに不具合が起きても既存の航空機より安全と言われています。 もしすべてのプロペラが動かなくなったら……。その時は墜落するしかありませんが、そうなる前に運航を制御する基地局がコントロールして安全な場所へ着陸させるか、機体にパラシュートを付けて緊急降下するかを考えます。空飛ぶクルマ自体がいままでにないものなので、乗ることに不安を感じる人もいます。事実、機体を見た人からは『面白いけど、自分が乗るかどうかは別』との声も聞かれます」(藤園氏)