やり抜いた先には、誰も知らない景色が広がっているんだろう「ディア・ファミリー」 作家デビューした小田実里が見た
だるいと思うこと。お風呂に入ること、部屋を片付けること、しゃべること。何かを成し遂げるって、「だるい」の積み重ねで、ドブ板にしがみつくことだったよな、と思い出した。 【動画】何もしない10年、やってみる10年、あなたならどちらを選ぶか? 「ディア・ファミリー」予告編
人生をかけた挑戦
余命10年を宣告された娘・佳美の命を救うために、工場を経営する父・宣政が巨額の資産を投じて人工心臓を医療素人の状態から作ろうと試みる。大学病院などを渡り歩き人の手を借りながら奮闘するも、娘の状態は悪化し、人工心臓でも助からない命であることを医師から伝えられる。余命10年のうちに娘の命を救うという夢を絶たれた宣政は、娘の願いのもとさらなる大きな挑戦に人生を懸ける。 人工心臓を発明し、娘の命を救うという夢を絶たれた父・宣政。死を待つほかなくなった娘の運命に落ち込む家族を横目に、一人颯爽(さっそう)と家を出ていく。これまで研究してきた人工心臓の開発を諦め、心臓の動きを補助するIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルを日本人向けに開発しようとする宣政に、妻・陽子は投げかける。「娘の命はもう助からないのにカテーテルを作ることに何の意味があるの」と。悲壮な目で夫に投げかける妻に対して、「これは娘との約束だから」と言って、父は迷わずにカテーテルを作ることに没頭し始める。娘を救うものではないが、心臓の疾患で苦しむ多くの人を救うカテーテルを。
「だるっ」と思ってしまう私
「なんの意味があるの」と問いかける妻の言葉が、めんどくさがりな若者(私)を表しているように見えたこのシーン。意味がないと思うものは、だるくて、面倒臭い。それに非効率。いや、非効率なのが見えてしまうからだるい。やる意味が分からない。このシーンから私は、1日の生活で何度「だるっ」と思い、意思決定を迷っているだろうかと考えさせられた。朝トイレに行ったり、お風呂に入ったり、散らかっている部屋を片付けたり。たまに、米を咀嚼(そしゃく)することですらだるいと感じる。そう考えると、1日に最低10回はだる、めんどくさ、で意思決定に悩んでいるのではないだろうか。やると決めれば全部一瞬で終わるというのに。 映画の中で、人工心臓やカテーテルを作るために資金や人などの協力が得られなくとも、たとえ目の前の娘が死を迎えようとしていても、たくさんの人の命を救うカテーテルを作ろうとする宣政を見ていると、めんどくさがりな自分を殴られているような心地がしてくる。