【菊花賞】「あんなことになるか?」激流に飲み込まれた1番人気ダノンデサイル 横山典弘が残した言葉
[GⅠ菊花賞=2024年10月20日(日曜)3歳、京都競馬場・芝外3000メートル] 「あんなことになるか?」――言葉に表すなら「苦笑」といえる表情だったが、内からは抑えきれない悔しさがにじみ出ていた横山典。ダービーからの直行で迎えたダノンデサイル。6着に敗れた相棒との3000メートルを、検量室のリプレー映像で何度も何度も振り返ってから姿を現した。 スタートをきれいに出て、1周目は5番手のインという絶好の位置を確保。横山典と、まさに〝一体〟となったようにピタリと折り合う。人馬の呼吸音まで重なっているのではないかと思えるような走り。見守ったファンの頭にはきっと、勝利の文字が浮かんだのではないか。しかし、ハナを主張したエコロヴァルツのペースがあまりに遅く、800メートル付近でラップタイムがガクンと落ちたことで、メイショウタバルが掛かった。さらに、中団にいたピースワンデュックも激しくかかり、ダノンデサイルをカットするような進路で前へ躍り出る。出入りの激しい競馬。ピースワンデュックの動きについていった馬たちが、ダノンデサイルの前で大渋滞を起こしていた。 「かわいそうな競馬になってしまった。1周目はいい位置を取れていたんだが、2周目で次から次に…。誰が悪いわけじゃないんだが、とにかく流れが悪かった」 横山典は激しい濁流の中で、必死にデサイルの競馬を守り続けていた。しかし、いまだかつて経験したことのない特殊な流れの中で、一番いい位置を取っていたばかりに行き場がなくなっていたのだ。 「最悪の流れの中で、デサイル自身はよく頑張っていた。ラストも伸びていたんだが…」。そう言って視線を落とす。しかし、次に顔を上げると「しかしデサイルが成長をしていることも感じた。これからもっと、頑張ってくれると思う」と前を向く。最後に「これも競馬だ」と言い残した横山典。それは自身を納得させるための言葉ではなく、奮い立たせるための言葉に思えた。
赤城 真理子