ビューティ企業がメキシコ市場を重視するべき理由とは エスティや「シーイン」など続々参入
トレンドに敏感な若年層が厚い
メキシコは米国のトレンドに影響を受ける若い世代が多く占め、美容やパーソナルケアの需要は高い。世界銀行のデータによると、22年のメキシコの人口は1億3200万人以上のうち14歳以下が25%であったのに対し、米国では18%、日本では12%ほどだった。「ヴォーグ メキシコ」「ヴォーグ ラテンアメリカ」のカーラ・マルティネス(Karla Martinez)コンテンツ責任者は、「メキシコは若者が多く、非常に向上心を持った彼らは、隣国である米国のトレンドに敏感だ。特に、知名度の高いカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)のメイクアップラインや、トップメイクアップアーティストとして知られるパット・マクグラス(Pat McGrath)によるコスメブランドの上陸は多くの若者が待ち望んでいた」と話す。
フレグランスカテゴリーに盛り上がりの兆し
中でも好調なカテゴリーの一つがフレグランスだ。調査会社サーカナ(CIRCANA)によれば、昨年メキシコに上陸したばかりの「キリアン(KILIAN)」は急速に人気が広がり、メキシコの高級フレグランスブランドカテゴリーにおけるトップ10にランクインした。ローカルブランドの成功も目立ち、ベロニカ・ペーニャ(Veronica Peña)、イグナシオ・カデナ(Ignacio Cadena)、エクトル・エスラウェ(Héctor Esrawe)によって共同創設されたニッチフレグランスブランド「シヌゥ(XINU)」は、現在メキシコに4店舗を持つほか、グローバル展開も視野に入れている。ペーニャ共同創設者は、「この5年間でメキシコに進出したニッチフレグランスは数多くあり、消費者は香水や美容全般にこれまで以上に関心を向けている」という。
「メキシコの消費支出の見通しは明るい」とエコノミスト
経済調査会社のキャピタル・エコノミクス(CAPITAL ECONOMICS)のウィリアム・ジャクソン(William Jackso)=新興企業チーフエコノミストはメキシコの経済について、「ここ数年、力強い成長が見られる。特に労働市場は堅調で、失業率も低い。賃金は急速に上昇しており、消費支出の見通しは明るいだろう」と楽観視する。さらに、「メキシコと米国は強力な関係で結ばれており、両国の製造業には深い貿易関係がある。現在世界経済で見られる地政学的分裂の恩恵をメキシコが受けるかもしれないという期待もある。また製造業者においては生産拠点を中国からメキシコのような友好国に移す動きも見られる」と付け加える。