始まり、始まり(9月20日)
始まり、始まり―。木製の扉が左右に開かれ、物語の幕が開く。紙芝居にわくわくした経験は、幼い頃の楽しい思い出。後になって本に親しむ下地をつくってくれた▼「紙芝居文化の会」によると、誕生したのは1930(昭和5)年ごろ。街頭で演じられたのは、駄菓子を買う人集めのためだった。戦争に協力するためにつくられた暗い過去もある。今や、世界に広がり始めている。一枚一枚の画面を通じ、演じ手と観賞する人が向き合う独特のコミュニケーションが魅力だ▼震災と原発事故の記憶と教訓を伝える紙芝居を高校生が編む。取り組んでいるのは、ふたば未来学園高とあさか開成高の生徒15人。富岡町のNPO法人が主催する講座で、創作や人を引きつける表現の仕方を学んでいる。「13年前の記憶が乏しい」と話す生徒もいる。突然襲った複合災害と向き合う時間は、自らのあり方を考え、古里の来し方に理解を深める貴重な体験になる▼冬休みには、保育園や児童クラブに出かけて上演する。小さな子どもたちとの間に、どんな交流が生まれるだろう。おにいさん、おねえさんと一緒に、次の世代が、より良いふるさとの明日を考える始まり、始まり―。<2024・9・20>