サトウキビ2千トン農家誕生 大竹勝人さん、榮完治さん 奄美群島23年産
鹿児島県奄美群島各地でサトウキビ収量2000トン超の生産者が誕生している。今春収穫を終えた2023年産では、いずれも家族経営の大竹興産(伊仙町阿三)と立神Works(奄美市笠利町節田)が2000トン台に到達した。高齢化や離農に伴う土地集約と大規模営農に対応する機械化の進展で、収量1000トン台農家は増加傾向。その上を行く2000トン台は24年産でも新たに誕生する見通しだ。 ◆技術革新 大竹興産は1996年設立。設立者は4年前に85歳で他界した精一さんと現在61歳の勝人さん親子の夫婦4人。キビ生産法人の先駆けで、機械化一貫体系の先駆者でもある。98年産で2組誕生した奄美群島初の1千トン農家の一つ。親子は2001年第25回南海文化賞(南海日日新聞社主催)で特別賞を受賞した。 親子はキビの将来を信じて歩んできた。「借りてくれ」という畑を引き受け、面積を徐々に拡大。それに対応するための栽培体系を試行錯誤しながら築き、機器を導入・開発した。 現在、勝人さんの息子2人と娘婿1人を含む従業員7人。勝人さんは勤めていた南西糖業を50歳で辞め、14年に黒糖製造の徳之島かんかんファームを創業。冬の収穫期は主に若手3人が収穫と畑の管理作業、他4人は黒糖製造に従事する。 23年産は収穫面積30・36ヘクタール、2146トン。作柄は夏植え10・93ヘクタール、春植え3・34ヘクタール、株出し16・09ヘクタール。10アール当たり単収は約7トン。糖度を含め、地域平均を上回った。 品種は「うちに合っている」という農林30号が中心。作柄は夏植えを重視。「春植え、株出し体系への移行を促された時期もあったが、それでは収量が上がらない上に、収穫期の作業量が膨大になっていた。3、4年前から昔の形に戻した」と大竹さん。 機器は、10年ほど前に開発した植え付け機「ビレットプランター」に続き、株出し管理用の「すき込み施肥機」を開発した。肥料を地中に入れ込む機器で、雑草の繁茂が抑制され、施肥量も削減された。中耕・培土を省略する不耕起栽培で、作業量減によって燃料や修理などの経費削減につながった。 「手抜きはするけど、やるところはきちんとやる。手抜きをきちんとやると、単収が上がり、実入りも増え、面積も拡大できる」と大竹さん。現在の栽培面積36ヘクタール。「次の目標? 今のところ考えていない。継続できればいい。それが難しい」 ◆切磋琢磨 立神Worksは現在63歳の榮完治さんが息子らと2021年設立。榮さんはキビ農家に生まれ、30歳で就農。面積1ヘクタールで始め、離農者の畑を借りるなどして拡大。35歳ごろ5ヘクタール、40歳ごろ10ヘクタールに。息子3人が順次、キビ作に加わった。2016年産で奄美大島初の1千トン農家になった。 伊仙の大竹さんや喜界の大規模農家らと交流を続け、切磋琢磨(せっさたくま)しながら成長を続けた。23年産は収穫面積36・50ヘクタール、2054トン。作柄は夏植え中心で、今夏は10ヘクタールの新植を予定している。 「最初は夫婦2人で500トン、ハーベスターを入れて1000トンを目標にした。2000トン? 気持ちいいよ。また作れるから。前向きでいられる」と榮さん。ただ、地域の基幹農家となり、担ぎきれないほどの作業依頼が舞い込む。肥料や燃料など経費全般の上昇など気掛かりな点は多いという。 ◆沖永良部、喜界でも 群島内の製糖会社やキビ生産対策本部によると、和泊町の芋高司さん(43)は数年前から2000トン超で、23年産は2594トン。喜界島では1000トン超が10件余りあり、親子では2000トンに達する例も。喜界島ではそれらの組み合わせで法人化の動きがあり、24年産は2000トン生産者の誕生を見込んでいる。