金融業界が年頭あいさつ 「貯蓄から投資へ」の流れを大きなうねりに
金融業界の団体トップは1日、2025年の年頭あいさつを公表した。昨年に続き、日銀の利上げ継続や「資産運用立国」の進展に期待する内容となった。 【図解】専門家が予想する2025年末の株価・為替 ◇全銀協「『失われた30年』脱却の転換点に」 全国の銀行を会員とする全国銀行協会(福留朗裕会長=三井住友銀行頭取)は年頭所感で、24年3月に日銀が金融政策を転換して17年ぶりの利上げに踏み切った点に言及。「『金利ある世界』が再来し、銀行界にとって大きな節目となった」と振り返った。 24年度は新NISA(少額投資非課税制度)の普及など投資を促すことに注力。スタートアップの新事業や脱炭素化の支援を続ける考えを示した。 リスク要因としては「深刻な内需不振が続く中国経済」を挙げ、「『失われた30年』からの脱却に向けた転換点にある。『金利ある世界』への移行がさらに進む中、経済の好循環の定着に貢献する」とした。 ◇日証協「一時的なブームで終わらせない」 日本証券業協会(森田敏夫会長=野村証券前社長)は、24年を「『貯蓄から投資へ』の流れが明らかに動き始めた年だった」と振り返った。「この流れを一時的なブームに終わらせることなく、さらに大きなうねりにできるよう、業界を挙げて取り組む」と強調した。 具体的策として、国民の資産形成支援の強化▽非上場企業の資金調達などスタートアップ育成の支援▽高齢化社会に対応した金融サービスの実現▽業界横断的な事務部門などの業務効率化――などを挙げた。 ◇損保協「信頼回復が最優先」 一方、損害保険会社の業界団体、日本損害保険協会(城田宏明会長=東京海上日動火災保険社長)は「お客さまと社会からの信頼回復を最優先課題と位置づけ、全力で取り組む」と記した。 損保業界では23年以降、自動車保険の大規模代理店による不正請求問題などの不祥事が相次ぎ、24年も顧客情報が他社に漏れるなどの問題が発覚した。 あいさつ文では、代理店の第三者評価制度の構築に向けた動きや個人情報保護に関するセミナー開催といった対策に触れ、「社会から必要とされる業界を目指し、決意を新たに変革に取り組む」と結んだ。【井口彩、成澤隼人】