卒業式で「袴に振袖を合わせる」のはアリかナシか 最近は「くすみカラー」の袴スタイルが人気に
黒紋付とは五つ紋の黒地で柄のない着物です。喪服と言えばイメージがわくでしょうか。黒字で五つ紋は色も家紋も、着物でいちばん格の高い位置づけになります。そのため、黒紋付は第一礼装として祝い事にも弔いごとにも着ることができるのです。 実際に宝塚音楽学校の卒業式は、黒紋付に緑の袴ですね。女性は19歳で厄を迎えるので、その厄よけに黒紋付をつくるのがならわしです。紋付に入れる五つ紋は、背中の紋がご先祖、両胸が父母、袖は兄弟姉妹を現していて、先祖、家族が守ってくれるお守りになるからです。袴スタイルで、最高に礼をつくすスタイルは、黒紋付に袴姿です。
袴姿を制服スタイルととらえるなら、着物は色無地や小紋でもよいでしょう。袖も若い間は長めにすることがありますので、標準の1尺3寸(約49cm)より長い2尺袖(約76㎝)でもよいと思います。足元も、制服スタイルと考えるなら、昔の学生のようにブーツでもいいのかもしれません。 ■袴姿でトイレに行くのは不便? ちなみに、小学校でも袴スタイルは増えていますが、最近では、袴スタイルではトイレに行けない、着崩れたときの処理ができないなどの理由で、禁止する学校もあるようです。
着物を日常的に着ている私からすると、着物や袴の着付けは、少し慣れておいたら簡単であり、トイレもスカートとあまり変わらず、何の問題もないと思います。 いろいろお話しいたしましたが、そんなに大げさな決まりごとはありません。着物は丹田を刺激し、心が落ち着くと言われています。1人でも多くの方が着物を着て厳かな気分で、卒業式に出席してくださることが、呉服屋主人の喜びです。
池田 訓之 :株式会社和想 代表取締役社長