ロシアが柔道ルーツの格闘技「サンボ」で愛国心教育 ウクライナ侵攻と関係が…? プーチン大統領“支持母体”政党が推進
柔道をルーツの1つに持つロシアの格闘技「サンボ」。そのサンボと柔道の達人ともいわれるプーチン大統領が今、サンボの普及に力を入れている。実際に推進しているのはプーチン氏の支持母体である政党「統一ロシア」だ。サンボを通じて子供たちに“愛国心”を育てるのだという。 11月16日はプーチン大統領が定めた「サンボの日」だった。ウクライナ侵攻開始から1年9か月――サンボは、ロシアをどこへ向かわせるのか?
■突然、街に現れた「学校でサンボをやろう」PR看板
NNNモスクワ支局の前に立つ広告塔に10月、「学校でサンボをやろう!」という広告が登場した。サンボは日本の柔道をルーツの1つに持つロシア独自の格闘技。それを「子供」のうちから「学校」で教え込もうというのだ。広告主はプーチン大統領の支持母体、政党「統一ロシア」と「全ロシアサンボ連盟」。なぜ今、学校でサンボなのか? ロシア教育省は今年3月、「ロシアのすべての地域で1年生から11年生(6~17歳)までを対象としたサンボの指導方針が検討されている」と発表。表向きはロシア発祥のスポーツの普及だが、その裏には透けて見えてくるものもある。
■大統領令で決定「11月16日は『サンボの日』」
11月16日は「サンボの日」。プーチン大統領が去年12月、大統領令で突然、決めた。ウクライナ侵攻が長期化する中、「部分的動員」発表があった2か月後のことだった。 最初の記念日となった16日、プーチン大統領は「『サンボの日』のイベントを通して、若い世代の調和のとれた育成に貢献できる」と祝辞を述べた。KGB出身のプーチン大統領が“柔道やサンボの達人”であることは知られているが、第二次世界大戦以前から存在する「サンボの誕生日」を、今になって制定したのは、なぜなのか。
■柔道にルーツの一部を持つ格闘技「サンボ」
改めて「サンボ」について紹介したい。サンボは1920年代、旧ソ連軍や警察官の自己防衛術として誕生したロシア(旧ソ連)の格闘技だ。フランスや旧ソ連の民族格闘技のほかに、明治時代に日本で柔道を身に付けたスパイ、オシェプコフ氏の「柔道」をルーツに持っている。1938年の「11月16日」に旧ソ連体育・スポーツ委員会の命令で、当初は「フリースタイルレスリング」として誕生した。 実際には、柔道着のような道着と帯をつけ、レスリングシューズのような靴とショートパンツで、円形マット上で競いあう。相手を投げるなどして優勢ポイントを稼ぐか、肘、膝、足首の逆関節を取って、相手が降参すれば勝ちとなる。 将来のオリンピック競技を目指していたサンボの競技団体「国際サンボ連盟」は2021年、IOC(国際オリンピック委員会)から正式に承認された。しかし翌22年、ロシアはウクライナへの軍事侵攻によって、オリンピックへの参加自体が難しくなった。 こうした中で、サンボを“愛国心”教育のために…とする考え方が台頭してきているのだ。